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第383回生物保護の現状
(2009年7月6日)
中国国家林業局が5年間をかけて189種の重点保護野生植物に対して行った野外調査の結果が2008年に明らかになり、うち55種の絶滅が確認されました。中国では環境破壊・汚染や乱獲などで更に1000種が絶滅に瀕し、4000種が脅威を受けているとも言われています。
勿論、政府も全く手を拱いていたわけではありません。トキは1980年代に一時絶滅したとされましたが、1981年に陝西省で7羽の生息が確認され、保護活動がスタート、2007年には1000羽を超え、その恩恵が日本にも及んだことは周知の通りです。中国外交の切り札(?)にもなっているパンダは繁殖も順調に行われるようになり、2008年10月には、世界初のパンダの遺伝子配列の解読に成功、今後の繁殖に大きな弾みをつけました。
水生生物に対する取り組みも成果を上げつつあります。2008年4月、年初の大寒波で長江イルカの保護区が氷結、呼吸をするため氷を割ったイルカが次々と傷つき、5頭が傷口感染で死亡しました。幸い、関係者の努力で負傷した他の22頭は回復しました。長江イルカはトキ同様、80年代に絶滅に瀕し、1990年に5頭を捕獲して繁殖に取り組み、30頭あまりの繁殖に成功、その経験が大いに役立ったわけです。長江では同じく揚子江ワニの絶滅が危惧されていますが、2008年7月に、安徽省で野生に戻した揚子江ワニの産卵が確認され、重点野生保護動物カラチョウザメも、2008年、2004年捕獲後初めて産卵をしたとのニュースが伝わっています。長江は水質の悪化によって多くの魚類も姿を消し、漁業がピンチに立たされています。2008年11月、<長江水生生態システム修復プロジェクト>の一環として、39万匹の各種の稚魚が放流されましたが、こういった取り組みは全国に広がりつつあり、同年4月の世界地球デーには8省で一斉に稀少水生動物20万匹の放流が行われました。
個々の生物の保護に対する対応と平行して、総合的な取り組みも始まっています。2001年からは、全国で野生動植物の保護と自然保護区の建設が始まり、チベットや青海省ではレイヨウなどの個体数の増加が顕著になっていますが、その一方で、心無い人々の乱獲は一向に減る気配を見せません。大別山のラン(人民日報2008.4.4)、高級接待に使われる青海湖のコウギョ(人民日報2008.4.15)の記事は氷山の一角でしょう。野生動物は遺伝子資源として戦略的重要性も高まっており、その面からも保護を求める声が高まっています。