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第385回中医学の基準化と中国のグローバル戦略
(2009年7月20日)
中国の中医薬学の復興と発展に対する近年の積極的な取り組みは、本コラム304.305号で既に詳しく紹介しましたが、ここ5年の様々な分野での取り組みを総括すると、政府主導による国を挙げた取り組みを中心に、主要な動きとして以下の諸点が挙げられます。
中医学の保存・発掘・継承・発展・革新については[①中医学の伝統の再評価 ②中医学の基準化、特許化]、中医学のグローバル戦略の構築については[①中医学の国際化と普及 ②中医学の世界文化遺産申請 ③中西結合の推進 ④中医学用語の英訳化]、中医学産業分野の育成と世界戦略については[①漢方薬の信頼回復への取り組み ②製薬会社の育成とグローバルな市場の確保 ③“未病”分野のニーズの育成とビジネスモデルの構築]、国内医療における中医学の果たす役割については[①農村医療における中医の役割の強化 ②中医坐堂”の復活]。
この中で、特に注目すべきが中医学の基準化、特許化でしょう。其処には中医学の発展でグローバルな主導権を握り、ビジネスモデルの構築にもつなげようという意図がはっきり見えます。2003年9月に<世界中医薬連合会>が成立し、本部が中国に置かれた際には、「中国が中医薬国際化基準を制定し推進する合法的な身分を有する」事が公言され、中医薬名詞述語基準・中医薬基準・中医薬医療機関設置基準・中医薬就業人員基準・中薬基準・設備基準の制定が構想されました。2005年7月、中医薬研究を973計画に組み入れた中国は、2007年1月、<中医薬法>草案を完成させ、呉儀副首相が全国中医薬工作会議で中医薬知財権強化と中薬産業育成を強調しました。
その後、世界中医薬学会はTOEFLをモデルにした中医薬の各種試験を、本部を中国に置く世界中医薬学会連合会と世界針灸学会連合会で行う、とし、5部門21ランク(医師5ランク、薬剤師5ランク、看護士4ランク、教師4ランク、技術員(按摩、美容、足治療など)3ランク)が設置されました。2008年、世界中医薬学会主催第1回世界中医薬教育大会は<世界中医学本科教育基本要求>を発表、中医学のカリキュラム内容の規範化にも取り組んでいます。2009年5月、国務院は<中医薬事業発展の助勢と促進に関する若干の意見>を出し、“中西医併重”を強調しましたが、中国の取り組みに日本はどう対応するのでしょう