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第403回最近の労働問題
(2009年12月7日)
2007年に『労働契約法』『就業促進法』『労働争議調解仲裁促進法』を立て続けに制定し、労働問題に対する基盤を確立した中国ですが、昨年来の経済危機は労働問題に少なからぬ影響を及ぼし、対処を誤れば深刻な社会不安を醸成しかねません。
2008年末で全国の労働争議仲裁機構は6200箇所あまり、それらが2008年1年間に受理した労働争議案件は69万3000件(立案件数:前年比98%増)、また、全国の裁判所が受理した労働争議案件は28万件(前年比93.93%増)を超えました。今年に入り、経済危機の影響が深刻化、2月時点で職を失った出稼ぎ農民は2000万人に及び、政府は『当面の経済情勢に対応し労働関係を安定させるための指導意見』を出して、行政と労働組合と企業が三位一体となって問題に取り組む姿勢を打ち出しましたが、それでも2009年上半期の受理件数は17万件(前年同期比30%増)、とくに広東・江蘇・浙江といった輸出産業の多い先進発達地域では第一四半期に前年同期比41.63%・50.32%・159.61%増を記録しました。これに対し最高裁判所は労働契約解除に関するトラブルの解決に力を入れるため、7月12日に『当面の情勢下で労働争議紛糾案件審判業務を着実に行うための指導意見』を発しました。
年初、政府は失業者対策に力を注ぐ一方、春節に備え、例年にもまして不況による給料の未払いへの対策を強化しました。『企業の給料欠配の予防と解決を一層着実に進めるための通知』がそれで、給与保証金制度の実施範囲を交通・水利などの分野に拡大すると同時に、企業に手順を決めた欠配報告制度の確立を求めました。更に2009年8月には欠配に遭った労働者が仲裁手続きを経ずに直接裁判所に訴える権利も保障されました。外資系企業の逃げ得には、既に2008年末に外資の中国非正規離脱に関する追究と訴訟に関する手引きを出して対応しています。青島では2003年以来、非正規離脱の韓国企業が206社を数え、2万6000人が欠配被害に遭ったとのことで、不況で同様な事例が急増していることは確実です。
給与レベル維持への取り組みも見られます。中華全国総工会は7月20日、『産業別給与合同協議を積極的に推進するための指導意見』を出し、給与の最低基準・調整幅・労働別基準額・支払い方法などの問題に取り組む姿勢を示しました。経済危機が理由の減額やサービス労働、職業訓練費と称して給与から差し引くなどの行為にも目を光らせています。