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第404回軍の動向
(2009年12月14日)
2009年7月3日の人民日報。第19面は全面『軍事』。下欄の“致読者”には「人民日報の紙面拡充に伴ない、新しい専門紙面『軍事』を創設し、新しい世紀・新しい段階における世界の軍事変革の下での国防と軍隊建設及び現代の革命的軍人の革新的価値観を極力宣伝し、解放軍と武装警察の革命化・正規化・現代化建設を十分に反映する」と書かれていました。
これより半年余り前の1月21日、人民日報は3ページに及ぶ『2008年国防白書』を掲載しました。1998年に最初の国防白書が発表されたときはわずか5章でしたが、その後2年ごとに発表され、第6回目の2008年版は14章に及びました。
白書はまず、各国の協調により世界大戦の危機は当面無い、との判断を示す一方、覇権主義・強権主義の存在により地域的局地的騒乱が多発し、その中で戦略核・宇宙の軍事利用・ミサイル迎撃システム・偵察監視などでハイテク化が進んでいると指摘しました。アジア太平洋地域については、民族と宗教、領土と海洋権益の問題を強調し、米軍の再編と能力増強にも言及、中国は防御を目的とした国防政策に徹するとしつつ、2010年までに基礎を確立し、2020年までには機械化とIT化を急速に進め、21世紀中葉には軍の近代化をほぼ達成する、との目標を掲げました。3月18日の『軍隊の戦闘力の生成モデルを着実に切り替えよう』(王寿林)と言う同紙の記事は、IT化がいかに必要かを全面的に解説しています。
4月23日は海軍創設60周年記念日。北海艦隊・東海艦隊・南海艦隊の観艦式には14カ国から21席の艦艇が招かれました。ここでも海軍の5大兵種(水面艦艇部隊・潜水艇部隊・航空部隊・海岸防衛部隊・陸戦隊)のIT化が喧伝されましたが、その3日前、全人代第8回会議では『国防動員法(草案)』の第1回審議が始まっていました。平時の動員準備と戦時の動員実施に法的根拠を与えることで、緊急時に国民や各地方政府組織、企業までも即時合法的に動員できるようになるのです。
一方、3月11日の、胡錦濤が全人代解放軍代表団全体会議に出席した記事や、6月18日・9月10日の長文の文章では、軍の党に対する絶対服従が強調されました。国軍が共産党の軍隊というのはおかしい、という国内外の主張への危機感と同時に、強大化する軍を今後どうコントロールするかが今まさに迫られている問題であることの現われと言えましょう。