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 第406回国学の発展と課題

(2010年1月12日)

2009年は中華文化の作興が大いに唱導されましたが、その前触れとして、2008年から、国学論議がこれまでになく盛んになりました。それまではモラルの再構築を目的とした学校教育などへの儒家思想の導入がニュースになっていましたが、ここ2年の特徴は、国学の定義・内容に関する議論が深まりを見せたのがでしょう。
国学を単なる古典遺産として捉えるのではなく、現代にも有用で、絶え間なく発展し続ける学問として位置づけよう、というのが大方の一致した見解です。劉埜氏は胡適と馬一浮を対比させ、「国学は静止した死物ではなく、生き生きとしたもので、庶民の“日用”の中に体現されているものだ」という馬一浮の観点を高く評価しました(人民日報2008.1.8)。
方克立氏は、一般に国学とは近代的な学問分類が形成される前の「経・史・子・集」つまり「四部」の学を言い、一つの学問体系であり、学問分野ではない、と主張しました(『国学とは何か』人民日報2008.8.26)。国学ブームについては、劉夢渓氏が、90年代に香港中文大学の金耀基学長との対話で聞いた話として、「20年代は(伝統への反発から)見たがらなかった、80年代は(文化大革命などで伝統文化が大量に消失し)目にできなかった」という言葉を紹介し、国学の基本的要素として経学と小学を挙げ、小学を構成する文字・音韻・訓詁の重要性を指摘しています(人民日報2008.4.8)。まさに正鵠を射ているといえるのが朱鉄志氏の文(『国学ブームと文明の伝承』(人民日報2009.3.21)で、復旦大学の銭文忠教授の「国学ブームなど存在しない、国学ブームなど必要ない、国学ブームには一部中国人の驕りといたずらな自負が見受けられる」「“もう西側に学ぶものなどない”“21世紀は中国の世紀だ”などと言うのはいささか身の程知らずだ」という言を紹介しつつ、“古為今用”“中体西用”の意味する内容は何か、「その糟を取り去り、精華を取る」の「糟」「精華」とは具体的に何を指すか、についての共通認識の欠如をまず問題にすべきだ、と説いています。
こういった一方で、親への孝と国への忠をオーバーラップさせ、さらにそれを共産党への忠誠へと結びつける言論も盛んになっています。2009年9月、清華大学で『四書章句集注』を用いた講義が始まり、論議を呼んでいますが、衣食足りた中国が「国学」とどう向き合うのか、正しい対処の仕方はどうあるべきか、今後に関心が集まっています。

三瀦先生のコラム