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第四十一回 リサイクル
「“ゴミ”は置き場所を間違えられた資源だ」。目下、都市から発生する分だけで年間1億2千万トン、しかも年率8%というスピ−ドでゴミが増え続けている中国では、そのゴミを資源としてリサイクルしよう、という機運が今急速に高まっています。中国では、建国以来1990年ごろまで、廃品回収と再利用はかなりの高水準で維持され、80年代でも、北京市内で出る年間80万トンの廃品のうち64万トンが再利用されていました。ところが、90年代になると、汚れ作業で利益率も低い、と嫌われ、出稼ぎ労働者という新手の働き手が出現したものの、一部の儲けの大きいものだけが回収され、その他は捨てられるようになってしまいました。
中国では80年代に使用され始めた家電類が今一斉に淘汰される時期にさしかかり、その数量は年間で洗濯機500万台、冷蔵庫400万台、テレビ500万台にのぼるといわれ、環境汚染も心配されています。一方で、中国は国民一人当たりの資源量は世界の平均の半分しかなく、しかも経済発展が続く中、2020年には国内で産出する主要資源45種の内、39種が国内の需要を満たせなくなる、という数字もあり、資源のリサイクルが重視されるようになったのです。
政府は第10次5ヵ年計画で<再生資源回収利用発展計画>を策定、再生資源加工工基地の建設や再生技術の開発に乗り出す一方、<再生資源回収利用条例>、さらには家電、パソコン、タイヤ、電池等それぞれの回収について個別に法整備を進め、また、<“社区”(地域社会)>による回収網の構築も図っています。
企業努力も進んでいます。既に、北京市朝陽区にある“中興廃旧物資回収公司”は5箇所の物資回収市場を経営管理し、年間取扱量は140万トンと、回収市場設立以前の北京全市の取扱量の7倍に達し、年間1千万元の利益を上げるに至り、廃品回収再利用の一貫システムの完成に意欲的に取り組んでいます。
回収可能な未回収再生資源が毎年500億元以上に達する中国。“資源-製品-汚染排出”という直線型伝統経済から、“資源-製品-再生資源” というフィ—ドバック型循環経済への試みが成功するか否か、その鍵は国民一人一人の意識の向上にある、と言えましょう。