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第415回2009年人民日報日本関係記事−その2−
(2010年3月15日)
日中戦争関連では、更に2009年11月の天皇陛下即位20周年の折に、陛下が記者の「日本の将来で何が心配か」と言う質問に「歴史がだんだん忘れられていく事が心配だ」と過去の戦争に対する反省を述べられた事も報道されました。
もう一つ特筆すべきは、中国国際放送局主催で行われた、過去百年で中国にもっとも貢献した、あるいは中国と縁が深かった人物についてのネット上でのアンケート調査『中国十大国際友人』でしょう。べチューン、スノーなどと並んで唯一日本人として選に入ったのは、松下幸之助でも田中角栄でもなく、平松守彦氏。WTO加盟後の中国農村の崩壊を防ぎ、発展を支えた一品一村運動を中国に普及させた氏の功績は、既に全国の主要大学の名誉教授に推戴されている事からも明らかですが、図らずもその功績が再度実証されました。
その他の記事では、例年の如く、環境への取り組みにかなりの紙面が割かれました。個別の商品では水・電気・時間の節約が売り物の花王の液体洗剤が取り上げられ、また、携帯電話など「都市の鉱山」、廃棄家電から希少金属を取り出す技術や環境保護自動車への取り組みも紹介されました。エネルギー節約への「自立国債」の提言や中国や韓国と共に6月に取り交わした10項目の環境優先協力も報じられましたが、水俣病問題の解決の難しさをレポートし、公害への注意を喚起した優れた記事(7月15日付于青氏)もありました。
日中友好交流の面では、歌手のさだまさし氏、『人民中国』の日本語訳に長年携った横堀克己氏に関する記事が掲載され、また、日本人の人情や日本の文化の良さ、風情といったものをありのままに伝えた文章では、張真氏のサクラに寄せる日本人の精神を紹介した文章が目を惹きました。
京都の嵯峨や嵐山、別府の湯煙、更に静岡や札幌の話題などのほかに、日本に学ぶべきものとして、独占禁止への取り組み、医療価格の政府主導の決め方、東京ディズニーランドのブランド戦略などが紹介される一方、女性の婚活、唐招提寺の文化財維持の難しさ、クレジットカード犯罪といった社会描写、更に、学生の就職難、新宿のホームレス、小林多喜二がもてはやされる世相にも冷静な分析が加えられました。総じて言えば、日本という国を多角的且つ等身大に見るバランスの取れた報道姿勢が目立った年と言えましょう。