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第420回最近の少数民族政策-その2−
(2010年4月26日)
日本の4月25日付新聞各紙は、24日の新華社電として、新疆ウイグル自治区に15年間君臨した王楽泉書記が退任、湖南省書記張春賢氏が同自治区書記に就任した事を報じました。約200人が死亡した2009年7月の騒乱とその後の民族間の不穏な動きに伴なう左遷だろう、との憶測が流れています。騒乱の直接の原因は6月26日に広東省の工場でウイグル族労働者が二人、漢族労働者に殴り殺されたのがきっかけですが、もともと東トルキスタン独立運動がその底流にあり、亡命下ウイグル人による<世界ウイグル会議>とその指導者ラビア・カーディル女史の動向にも、中国当局は神経をとがらせています。最近では、ウイグル問題研究家で同会議と関係が深い水谷尚子氏の入国拒否という事件も起こっています。
7月の騒乱の後、人民日報には、少数民族との融和を呼びかけ、また、政府の少数民族政策の成果を掲げた記事が相継ぎました。7月11日付は、国の<人口が比較的少ない民族の発展をサポートするプラン(2005〜2010)>に25億元余りが投入されたこと、それによって“四通五有三達到”(四通:電気・道路・ラジオとテレビ・電話/五有:学校・保健所・安全な飲料水・安全な住居・生活を維持できる畑や牧草地/三達到:一人当たりの食糧、収入、9年間の義務教育の普及率が過去に提示された目標をクリアする事)が、640の少数民族村のうち271で実現した事を強調しています。その一方で党中央と国務院は<民族団結宣伝教育活動を深く展開する事に関する意見>を通達し、8月24日には関係部門が合同でテレビ電話会議を開いて活動の具体的展開について協議、この活動は2010年を“”民族団結宣伝教育年“”として継続されています。
8月22日〜25日、胡錦濤総書記は新疆を視察、自治区幹部大会で、新疆の改革発展と安定団結を呼びかける講話を行い、その後、国慶節までの9月1ヶ月間に人民日報に掲載された、少数民族政策の成果を喧伝し融和を呼びかける記事の数は、新疆に特化したものを除いても20本を超えました。新疆同様、大きな問題を抱えるチベット対策については、2010年1月22日に党中央と国務院により第5回チベット工作座談会が開催され、当面の方針が提示されましたが、いずれにせよ、「人はパンのみに生くるにあらず」、それぞれの民族固有の文化伝統とその誇りをいかに尊重するか、その取り組みが不可欠でしょう。