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第424回BRICs−その2−対インド
(2010年5月31日)
「中印は世界の2大発展途上国である」「中印間には根本的な利害の衝突は存在せず、広範な共通の利益がある」「中印は協力相手であり、競争相手ではない」。2008年8月、コルカタ総領事館開設の際、楊潔篪外相はこう力説しました。中印関係は、過去、中印国境紛争やダライラマのインド亡命後の活動といった問題を抱え、膠着状態が続いていましたが、胡温体制スタート後、2005年に温家宝首相がインドを訪問し戦略的パートナーシップを確立、翌2006年には胡錦濤主席がインドを訪問し<共同宣言>を発表、中印協力10項目戦略を策定しました。2008年1月にはシン首相が中国を訪問、<21世紀の共通の展望>に署名し、世界の人口の3分の一、25億の人口を抱える両国の全面的な協力を謳いあげました。
その後は信頼醸成に向けた努力が続けられ、国境問題では2003年に特別代表による会談を開設、2005年、<国境問題解決に関する政治指導原則協定>を取り交わし、翌年には44年ぶりにナトラ峠の国境貿易が再開されました。軍事交流でも交流が進み、<中印防衛領域交流強化に関する覚書>を交わし、2007年に昆明で初の共同反テロ軍事演習“手拉手”が実施されました。文化面でも同年に<2007−2009文化交流項目>を策定、鉄道・住宅・土地資源管理・伝統医学など多方面にわたる協力が始まりました。
経済交流も急速な発展を見せています。1995年の両国の貿易額はわずか11億ドルでしたが、2005年には187億ドル、2008年には518億ドルに達し、2010年は600億ドルが想定されています。インドにとって中国は既に最大の貿易パートナーになっており、「世界のオフィス」と呼ばれるインドからはサービス業、情報産業、バイオ医薬などが、「世界の工場」と呼ばれる中国からは電信・電力設備、有機化学工業、軽工業製品などが輸出され、インドの対中直接投資は累計3億ドル、中国の対インド直接投資は累計2.5億ドルに達しています。
ただ、両国間では、国連の改革、地域対話、気候変動、反テロ、農業補助問題など様々な側面での協力が掲げられている反面、「懸案問題の未解決と不必要な猜疑と誤解がここ数年不協和音を奏で、両国関係の健全な発展を阻害している」(2009.11.4人民日報、馬加力署名評論)と指摘される側面も無視できません。特に、対中貿易赤字に対するインド国内の反発は根強く、貿易摩擦によるトラブルは増加の一途をたどっており、予断を許しません。