企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

LastUpdate:

 第427回教育格差の是正−農村教師の問題−

(2010年6月22日)

2010年1月の教育部年度工作会議で掲げられた同年の教育政策4つの重点に「教育の公平を最大限度実現する」という項目が盛り込まれました。その中で最も重大視されたが都市と農村の格差、特に教師に関する問題です。教育の抱える諸問題に根本的に取り組むため、2008年8月に中国政府が立案をスタートさせ、広く意見を募っている『国家中長期教育改革と発展プラン綱要(2010−2020年)草案』の17章でも、教師の質の向上と待遇の向上が正面から取り上げられています。
2009年2月17日の人民日報に、山東省肥城市桃園鎮の雷印迎教育事務課主任の投書が掲載されました。その中で雷主任は、教師の配属を求める校長に対し「適格な教師がいるかどうかなど知ったことか!カリキュラムはお上の指示通りに開講するんだ!できなければ校長を辞めろ!」と言いつつも心が痛む、と述懐しています。この鎮では、数年で教師50人余りが転職し、10人余りが教場に倒れ、10人余りが定年になり、一方の新規配属は20名余りで、2000年に500人いた教師も今では320人に。「資質が低く、年齢が高く、人数が少なく、仕事がきつく、給与が低い」のが現状、とも。
30年近く農村で教鞭をとってきたある教師の月給がわずか200元余り、との報告もあり、都市と農村の教師の給与格差は3:1に広がり、その上、農村教師は医療保険もありませんでした。2007年まで郷や鎮政府の負担だった給料が、2008年からやっと県の負担になりましたが、その県も財政上の理由で新規に採用したがらないのです。おかげで広東省では、10数箇所の後発地域で小中学校の教師が3万8000人も不足しています。
こうした状況を是正すべく、政府はこのところ矢継ぎ早に改善策を打ち出しています。その一つが“代課教師(代用教員)”を廃止し、優秀な者は正規採用にし、足りない分を“特崗教師”(師範大学などで高等教育を受けた30歳以下の教員)で補うプロジェクト。2009年から募集枠を5万人に増やし、3年の任期満了後も極力農村への定着を勧めていますが、ここでも給料の欠配が頻繁に発生、やる気に水をさしています。この他、都市と農村の教員の給与待遇の均等化と相互人事移動、業績給の導入、教員の再訓練も行われていますが、最大の問題は、経済発展に向ける金を捻出するために極力教育関係費を削る行政の姿勢でしょう。

三瀦先生のコラム