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第439回生物多様性の保護とバイオ産業
(2010年9月22日)
毎年、5月22日は国際生物多様性の日。国連は2010年を国際生物多様性年とし、中国でもこれに合わせ行動プランが制定され、2010年1月26日には北京で同活動の開始を告げるセレモニーが行われました。生物の多様性とは、様々な動植物や微生物の持っている遺伝子と、それらの生命が織り成す多岐にわたる生態システムを指します。それらは我々人類の衣食住などあらゆる生活に深く関わり、またそれを支えているものであり、人類の生存に欠かせない要素です。この分野の専門家金鑑明氏は記者の取材に答えて、「人類の歴史ではおよそ3000種の植物が食用にされ、また、75000種が食用にできる」「地球上の薬物の70%が直接間接に植物からもたらされている」「生物の多様性は様々な特殊な遺伝子を提供する事で寒さや病気に強いなど新品種の育成に貢献している」「中国特有の高等植物は17300種、中国特有の脊椎動物は667種に上る」と説明しています(人民日報2010.5.20)
広大な土地と自然を持つ中国は生物多様性の宝庫でもあります。これら資源の流出や自然破壊などによる喪失に対する危機感は近年中国国内で富に高まっており、また産業化による莫大な経済利益に着目して、官民挙げての取り組みが始まっています。2009年5月、国務院は<バイオ産業の加速度的発展を促す若干の政策>を原則的に承認、バイオ産業を中国ハイテク領域の基幹産業として位置づけ、バイオ医薬・バイオ農業・バイオエネルギー・バイオ製造・バイオ環境保護産業を重点領域として列挙しました。
中国政府は、2020年には、中国における生命科学とその産業規模は5〜6兆元、GDPの8〜10%にも達すると試算、バイオ技術による種子産業および医薬品産業の育成を最優先課題と考えています。独自開発した抗虫綿が2008年には国内市場の93%を占めたことを手本に、巨大多国籍種子企業への挑戦を目論んでおり、特に遺伝子組み換えには積極的に取り組んでいます。また、各地にバイオ医薬産業パークを建設、独自特許の取得にも全力を挙げ、既に続々と成果を上げつつあります。
ただ、その一方で、チベット自治区では貴重な薬草など野生植物が乱獲により激減、また、2010年は自然破壊に異常気象が重なり、広西チワン族自治区や雲南省などで多くの野生生物や動物が壊滅的な打撃を受けており、その対策も急務になっています。