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第440回幼児教育
(2010年9月27日)
義務教育前の幼児教育の抱える問題がクローズアップされています。2009年の統計では、全国の幼稚園数は14万箇所、在園児童数は2658万人、1年保育と3年保育の入園率はそれぞれ74%と50.9%で、希望者全入には程遠く、幼稚園の入園難、高い入園費が大きな社会問題になりました。公立幼稚園と私立幼稚園の割合や、大量の無認可施設の存在も軽視できませんし、入園できたとしても、施設や教育の質にあまりに差があります。また、農村では地域分布のアンバランスがひずみを生んでいます。
大都市では子供の入園先を探すのに親たちが涙ぐましい努力を払っています。申し込み受付のために3日間並んだ、などという話は珍しくありません。団地に併設されている幼稚園は当然その団地の住民優先ですし、企業や事業所が抱える幼稚園は、空きがない限り外部者は入園できません。また、多くの幼稚園が関係者の紹介がなくては入園できず、コネがものを言います。「妊娠したら幼稚園を予約する」「入園のために幼稚園の近くに引っ越す」といった話さえ聞かれます。これらの問題の根底には公立幼稚園の不足があります。1990年代以降、社会制度の変革につれ、公立幼稚園が次々と姿を消し、2003年には最低を記録しました。今、全国で私立幼稚園の数は9万箇所、全体の65%を占めています。首都北京では、2009年現在で幼稚園は1266箇所で適齢児童の半分しか収容できていませんが、そのうち公立は331箇所、30%に過ぎません。
もう一つの大問題はこれらの幼稚園の費用が年々高騰している事です。国の財政支援がほとんどない中、経営のためとはいえ、月に2〜3千元、年間で数万元もかかっては、出稼ぎ労働者家庭はもちろん、一般的な都市住民でも大きな負担になります。それでも親たちは子供をスタートラインでつまずかせてなるものかと必死になっているのです。山東省の青島市城陽区では幼児教育を同区の教育発展総合プランに組み入れ、各組織の責任を明確にし、財政基盤を整備して全入を実現しました。上海市では、出稼ぎ労働者の在住期間の長さや納税状況、取得技術などを点数化して、得点上位者は外部戸籍でも入園できる制度を始めました。
政府の<国家中長期教育改革と発展プラン綱要>は2020年を目標に1年保育の全面普及などを進めていますが、その一方で、教育の中身の検討も重要な課題になりそうです。