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第445回保険業界の動き−その1−
(2010年11月15日)
2009年10月1日、新<中華人民共和国保険法>が施行されました。中国の保険業は1980年に復活、その後、保険料の増加速度は年率平均30%を超え、1995年には最初の<保険法>が施行されました。また、2001年のWTO加盟を背景に、2002年には最初の改訂が行われ、更に2006年6月、国務院は<保険業の改革発展に関する若干の意見>を出して改革の全体目標や主要任務を含めた総合プランを提示しました。
急速な発展がもたらしたひずみ、その一つが、各社が掛け金の高い金融型短期投資保険にばかり力を入れ、長期保険やリスク保証型保険の開発をおろそかにしていた事です。保険が本来の役割を十分に果たせなかったよい例が2008年の四川大地震で、数千億元にも上る被害のうち保険がカバーしたのはわずか10億元という有様でした。こうしたツケが顕在化したのが世界金融危機。投資の利益回収率低下による顧客離れとその損失が経営を圧迫し、保険会社の保険金支払い能力の低下を招きました。こうした状況から、2009年、保険業界は大幅な改革を迫られたのです。
2009年1月1日、保険監督管理委員会は保険会社をリスク度に応じてA〜Dの4類に分類、保険仲介機構も3類に分けて管理監督を行う事にしました。中国では、銀行業に関しては情報公開がかなり進んでおり、顧客はネット上で様々な必要とする情報を手に入れることができます。しかし、保険業の場合、情報公開が進んでおらず、自分が掛けた保険でさえ詳細が分からないまま、代理人による中間搾取が横行しているのが現状です。
新保険法の特徴は、保険監督管理機構の監督管理の原則を定め、その職責を明らかにし、実際の取り締まりに必要な手段や措置を充実させてこうした現状に対処しやすくしたことです。また、新保険法の最大のポイントは被保険者の利益保護を重点に置いた事で、第15条・16条などでは保険会社側の契約解除や抗弁権に網をかぶせ、第17条・19条では免責条項に明確な説明を義務付け、違法な免責や被保険者の当然の権利を侵害する条項は無効としました。支払いを免れるため、一定レベル以上の病院の診断書の提出を求めたり、死亡者には死体解剖証明書を請求するといった理不尽なやり方はもはや通用しなくなるわけです。また、支払いの手順や期限も明確にされました。