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 第449回人材政策−その2−

(2010年12月20日)

前回で述べた2003年以来の人材育成に向けた計画を遂行すべく、政府組織の整備も着々と行われました。2003年にはまず人材工作協調小組が発足、中央組織部には人材工作局が設置され、2010年には31の一級行政区に人材工作指導機構などが、また、80%以上の県(市・区)レベルにも専門職員が配置されるに至りました。この過程で記憶しておくべき事は、この人材育成政策が完全に党主導で進められた事で、言い換えれば、この計画は、重要な側面として、共産党統治の強化が表裏一体を為していると言えましょう。
人材強国戦略は2006年からの第11次5カ年計画に独立項目として明記され、その後、2010年5月に開催された全国人材工作会議では党と国が挙げてこの大プロジェクトに取り組む意気込みを示し、6月6日には<国家中長期人材発展計画綱要(2010〜2020)>が公表されました。そして、GDPに占める人力資本投資を2020年には15%に、技能労働者に占める高級技能の人材比率を2020年には28%に、主要労働人口の高等教育経験者の比率を2008年の9.2%から2020年には20%に、といった数字が戦略目標として掲げられました。
同綱要は第2章でその主要任務として、イノベーション型科学技術人材、経済社会重点発展領域で緊急に必要な専門的人材、更に、企業経営管理・専門技術・高級技術・農村実用向人材・社会事業向人材の育成を挙げています。また第4章ではこれらをサポートする重大政策として、財政金融面の下支え政策、産学協同人材育成政策、農村及び遠隔地への人材誘導政策、起業支援政策、科学技術者研究支援政策、企業経営管理や専門技術者の合理的流動政策、非公有制経済組織や新社会組織の人材発展政策、人材発展促進のための公共サービス、知財権保護政策などが列挙されています。第5章ではこれらに関わる具体的な重要プロジェクトとして12の具体的なプロジェクト名も掲げられています。
人材強国建設のための行動綱領と位置づけられたこの計画を着実に実行していくためには今後様々な工夫が必要です。能力を正しく評価するためには、官尊民卑を廃し戸籍差別を撤廃することが不可欠ですし、能力本位の評価システムの確立と公平なインセンティブメカニズムの導入によって、人材が適正に社会に溶け込める環境も整備しなければなりません。今後10年、この試みが所期の目標を達成するか、世界は固唾を呑んで見守ることでしょう。

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