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第452回商業モラルの現状
(2011年1月24日)
中国では今、経済が発展し庶民の生活が飛躍的に向上しつつある中、如何にして消費を一層喚起し、内需拡大を図るかが重要テーマになっています。その過程で問題になっているのが商業モラルの欠如。悪質な手口が後を絶たず、消費者の権益保護が緊急課題になっています。先日、日本のラジオのある商品取材番組で「中国食品に比べ、安全、安心」といった言葉が耳に入りましたが、日本の消費者の中国食品に対する不信感は圧倒的。何よりも中国の消費者が自国の商品に不信感を持っているのですから事態は深刻です。毒入り餃子にしろ三鹿乳業の粉ミルクにしろ、「どうせ中国人が処分するはずがない、ほとぼりが冷めれば販売ルートに乗せ、事件が再発する」という日本人の予測が不幸にも的中する有様です。
まずは商品の値段。「パソコンを安く値切って帰宅してネットで調べたらその半額だった」「5割引の服を買ったら、実は付け値が価格の3倍で騙された」とかは日常茶飯事。品質も問題で、「スーパーのサービス品が壊れていたのでクレームをつけたら、『サービス品は見切り品だから当たり前』と相手にされなかった」「見本を食べさせられ、美味しかったので袋詰めを買ったら中身は別の粗悪品」もよくあること。また、保険にしろ住宅販売にしろ“覇王条項”が横行して、一方的に勝手な免責事項を設ける手口が問題になっています。更に、買ったまでは良いが、故障するとその修理がまた大変。ニセ修理の跋扈は論外(2010年3月、“中国質量万里行促進会”は家電修理インチキ特約店23社を公表)としても、まともな部品も交換したり、交換した部品が粗悪品だったり、法外な修理費を要求したり---。
ニセモノの横行は相変わらず。上海万博関連の商標権侵害グッズは花盛りでしたが、当局の摘発も焼け石に水。様々な証明書の偽造も盛んで、湖北省で摘発された事例では、警官証・結婚証・免許証など何でもござれの105種類(人民日報2010.8.6)。また、偽札の横行も歯止めが効いていません。極めつけは銀行の顧客不良信用記録。杜撰な調査で誤って記録に登録された深圳の村民20人余りが銀行を訴える事件も起こりました(人民日報2010.8.17)。
一人当たりのGDPが3000元を超え、観光旅行も盛んになっていますが、国内旅行者の50%がサービスに不満を感じ、そのうち20%がそれを訴える行動に出ています。消費者が泣き寝入りする時代はもう過去のものになりつつあります。真剣な取り組みが待ったなしです。