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第458回出版業の動き
(2011年3月7日)
「2009年は報道出版業改革へ攻勢をかけた年、2010年は決戦を挑んだ年」という表現からも分かるように、ここ2年、中国出版業界には企業化、市場化の嵐が吹き荒れました。
中国出版業界は近年大きく発展しています。2010年7月に政府が発表した初めての報道出版産業年次分析報告書によると、2009年の業界生産額は1兆元を突破、GDPの0.9%を占め、文化産業分野ではトップになりました。関係組織機関はデジタル関係を除いて35万7000社(非公有制32万4000社、90.8%)、就業人員は449万7000人に達しています。出版物で見ても、2009年は27万5700種、70億冊、販売額1456億元と世界第2位、デジタル出版も750億元で50%以上の伸びを示しました。
その一方で市場化された自由な競争原理が働いていない事による不合理や非効率が今後の発展、特に海外へ向けた発展を阻害しています。そこで政府は2009年に『文化産業振興計画』を、更に2010年にかけて『報道出版体制改革に関する指導意見』『報道出版産業の一層の促進に関する報道出版総局の指導意見』を相継いで打ち出し、改革を促しました。そこには「中国を出版大国から出版強国へ」、すなわち量から質への転換を図り、世界的な競争力のあるブランド企業を育成しようという決意が浮き彫りにされています。
改革のキーワードは株式会社化。その過程で国有経済・民営経済・国外資本が融合した混合経済化を強力に推進し、国有経済の持つ資源やフィールドに民営経済・国外資本が持つ経営理念や活力を合体させて、業界全体の発展を図る。具体的には、大幅な整理統合を通して集約化・大型化を進め、行政区域による制約や媒体別・業種別の壁を打ち破り、同時に市場化による利益の最大化を追求しようというものです。
政府の指導の下、2010年までに大学出版社103社、地方出版社268社が転換作業を終え、29の出版グループ企業が誕生、中央各部門の出版社148社も2010年末までに転換を完了しました。その一方で、2009年に政府は出版社評価制度を打ち出し、出版社を4等級に分け、最低にランクされた出版社は閉鎖される事になりました。
政府は、2020年には業界の総生産額をGDPの5%を占める重要産業に育て上げることを目標としています。ただ、強力な改革が言論弾圧の隠れ蓑にならない配慮も必要でしょう。