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第470回物価とインフレ−合併号2−
(2011年5月30日)
農家はこれまでに品種改良・品質向上・ブランド育成に力を入れたり、産業化と組織化を進めたりもしてきましたが、生産コストの上昇に加え、流通のインフラ整備や情報の伝達などがまだまだ十分ではありませんでした。例えば、農産物の流通は、現地での買いつけ→輸送→卸売市場→小売店といったルートを辿りますが、それぞれの段階で5〜10%の費用が加算されていきます。また、以前見られた“農貿市場”(自由市場)は正規の市場に取って代わられていますが、ここの「ショバ代」がバカになりません。北京では10年間で10倍になったとか。これらが全て小売価格に上乗せされ、消費者の負担になっていたのです。
2010年5月、中国人民銀行は2010年第1四半期の通貨政策執行報告の中で、物価上昇への懸念を示しましたが、下半期になっていよいよそれが現実化しました。同年8月、温家宝首相は国務院常務会議で価格の安定に檄を飛ばし、野菜の価格安定に向けた6項目の政策を確定しましたが、同月の主要36都市野菜卸売価格は前月比で21%の上昇を記録してしました。危機感を強めた中国人民銀行は10月、第3四半期の分析の中で再度警告を発しましたが勢いは衰えず、11月20日、遂に国務院は16項目の物価安定措置を打ち出す局面に追い込まれました。また、各地方行政府も、備蓄野菜を放出したり、価格補助を行ったりと続々と独自の対策を打ち出し、工商総局も7項目の消費価格安定措置を打ち出しました。
金融政策もこれに呼応します。既に同年10月、2年10ヶ月ぶりに金利を引き上げ、11月には同年6回目の預金準備率引き上げを実施、銀行融資の規制強化や人民元の緩慢な上昇容認も先行していましたが、12月3日、中央政治局会議でこれまでの金融緩和路線を金融引き締めに転換する方針が正式に決定されました。
2011年に入っても物価の上昇は続き、1月〜4月の消費者物価は前年同期比で5.1%増、食品価格は11.1%増を記録しました。この状況はもう数ヶ月は続くと思われますが、全体としては食品価格の上昇から転じて、発展途上国の経済発展や資源価格の上昇などによる輸入インフレの様相を呈しており、更なる元高誘導・利上げ・預金準備率の引き上げ、更にはエネルギー消費のコスト削減などが求められる事でしょう。