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第479回住宅問題の動き−その3・保障房−
(2011年8月1日)
2007年、大規模な保障性住宅建設が始まりました。それは、最低生活保障を受けているような極貧層には安い家賃の“廉租房”を貸し出し、低所得層には価格の安い“経済適用房”を、中所得層には価格を抑制した“商品房”を販売する、といった住宅保障システムでしたが、“廉租房” と“経済適用房”のハザマに取り残された「中の下」所得層に属する多くの庶民、また、新規就労者や出稼ぎ労働者の住宅問題が突出しました。
これを解決する方法として、2010年から、全国各地の保障性住宅建設で公共賃貸住宅が主要な地位を占めるようになったのです。前述の2010年590万戸に続き、2011年には1000万戸の着工目標が掲げられ、2011年2月24日に開催された全国保障性住宅建設に関する会議では、中央政府と各一級行政区との間で目標達成に向けて「目標責任書」(例えば重慶市は49万戸余り、安徽省が43万戸あまり、雲南省は40万戸余り、河北省は38万戸あまりなど)が取り交わされました。同時に各地で様々な取り組みが行われ、蘇州など一部の都市では、公共賃貸住宅の適用範囲を現地戸籍のない出稼ぎ労働者に拡大し、大連や九江などは、運用に問題が多く、不正使用が横行していた“経済適用房”の建設を停止し、その分を公共賃貸住宅に振り向けました。
一方、そのための建設資金をどうやって捻出するのか、建設用地は十分に用意できるのか、遅くとも11月までには全て着工する、というタイムスケジュールをどうやってクリアするのか、も論議の的になっています。重慶市では既に2002年、土地整備備蓄センターを設立、2003年には重慶地産集団が成立して土地の備蓄供給体制を整えており、その中から3万ムーが提供されます。また資金面では、必要な1000億元のうち30%を政府が銀行からの融資も含めて政府が工面、70%は民間の投資を見込んでいます。公共賃貸住宅の建設はそこに大量の消費者を呼び込むことであり、それによるビジネスチャンスは投資側にも大きな魅力になるため、十分な資金を呼び込めるだろう、という予測です。
ただ、公共賃貸住宅の最重要課題は、その運用管理で如何に公平性、公正性を維持するか、にあります。そこで政府は賃貸の管理強化を図るため、先頃<保障住宅プロジェクト推進を加速する若干の意見>を打ち出し、入居条件など詳細の明確化を急いでいます。