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 第482回2010年の人民日報日本関係記事−その2−

(2011年8月22日)

こうした最中、突然、鳩山首相が辞任してしまった事は、中国側を戸惑わせ、中国側当事者を苦しい立場に追い込んだ事は否めません。
9月3日から人民日報社主催の第13回中日経済討論会が開催され、これに先立ち、人民日報は『中日経済貿易協力の新しい章をともに描こう』という曹鵬程署名の論説を発表、9月6日付の同紙23面は『「世界経済の成長を推進するエンジン−中日協力のチャンスと課題』というテーマで全面を使って11名の主要参加者の発言を紹介しました。
こうした最中、翌7日、突如、尖閣列島で中国漁船衝突事件が発生しました。詳しい展開は散々報道されているので省略しますが、日本の新聞報道は大量に存在するのに、人民日報の主な関連記事は、数え方にも寄りますが、9月16本、10月7本、11月2本、12月1本に過ぎません。しかもほぼ国際面の小さな記事として掲載され、1面に掲載された記事は数えるほど。戴秉国国務委員が丹羽大使を12日未明に呼びつけた件は日本では大々的に報じられましたが、人民日報ではわずか7行に過ぎませんでした。
その後25日に船長が釈放されると、26日にはこれまでの記事より数倍規模の大きい『真摯誠実な行動で対中国関係を修復しなければならない』という記事が掲載され、日本を諭すがごとき論調で長期的視野に立った両国関係の構築を訴え、また、外交部スポークスマンの談話として、日本側に損害賠償を求めました。しかし、これは翌日には「損害賠償を求める権利がある」という表現になっています。中国では、過ちを認める事は謝罪の始まりであって終了ではありません。中国政府は船長の釈放を「日本側が非を認めた」と国民に説明しているわけですから、それに続く手続きとして賠償を請求する事は国民向けパフォーマンスとして必要になります。一方、日本側は、日中関係の重要性を考慮して譲歩したのですから、「この上何を」と憤激します。翌日に「権利がある」としたのは「今すぐ絶対に」ではない、という日本向けシグナルです。この記事の真下には、菅首相が「日中関係のいっそうの発展を呼びかけた」という記事が同じ大きさで掲載されています。その意図は明白でしょう。
なお、10月3日付に賈宇署名の『国際法視野下的中日釣魚島争端』という長文の論文が掲載され、中国側の理論的根拠が示されています。参照して下さい。

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