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第487回ASEANと中国の協調と摩擦−その2−
(2011年9月26日)
2010年10月にベトナムで開催された第一回ASEAN拡大国防相会議(ASEAN+8)では、日本やアメリカ・韓国以外にもASEANのメンバー7カ国が南シナ海を巡る中国の脅威に懸念を表明しましたが、これに関する人民日報の報道は、「(議長国である)ベトナムが、敏感な問題は討論しない、と呼びかけた」と報じるにとどまりました。続けて同月29日、中国とASEANとの首脳会議で、2002年に調印した<南シナ海における関係国の行動宣言>の履行と<行動規範>の策定を目指す事で合意に達し、中国に対し、最小限の釘を刺しはしたものの、実効性については何の保障もありません。
この間、人民日報は、同月に南寧で開催された第7回中国−ASEANビジネス・投資サミット、中国−ASEAN博覧会を積極的に報じ、10月28日には23面全面を使って中国−ASEANの協力の深化と発展を謳いあげ、中国脅威論についても「一つの論調に過ぎず、事実ではない」(11.30)と一蹴、<行動規範>への取り組みは全く報じませんでした。
領土問題という大きな棘が突き刺さってはいるものの、経済的なリンクアップは巨大なエネルギーとなってとどまる事を知りません。ベトナムの例以外にも、それぞれの国が独自の立場から中国との結びつきを強めています。その最たる例がシンガポールでしょう。
「蘇州工業パーク」に続き、スマートシティ建設への先駆的事例となった「中新天津エコシティ」(面積30平方キロ)は既に2007年に建設の<枠組み合意>を取り交わし、2008年着工、2010年7月には<中新天津エコシティ工作報告>が公表されています。中新天津エコシティ投資開発会社を設立、指標体系を整備し、プラン設計・経済促進・社会発展・水務・公共建築物の5つの共同作業チームを立ち上げての取り組みは高く評価されていますし、2010年7月には「中新広州ナレッジシティ」の建設がスタートしました。
グレーターメコン経済圏流域諸国も独自の動きを見せています。既に人民元はタイ北部まで流通しており、その決済通貨としての通貨価値は増すばかりです。異常渇水の原因が雲南省のダムにあるのではないか、という疑問に対して、2010年4月のメコン河委員会ホアヒン宣言がこれを否定したことに対し、中国に対する遠慮では、という見方も燻ってはいるものの、中国の圧倒的な経済攻勢にその声も消されがちです。