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第494回知識財産権保護活動本格化
(2011年11月14日)
2008年の<国家知財権戦略綱要>以来3年以上が経過し、専門職員の養成も進み、知財権保護への取り組みが漸く本格化している中国。司法面では2010年2月、最高裁が知財権民事案件について「2億元以上と、1億元以上で当事者が外部あるいは香港・澳門、台湾の案件の一審は高級裁判所」などと各級裁判所の取り扱い範囲を定めました。現在、知財権民事案件管轄権を有する最高裁指定の基層人民裁判所は92箇所ありますが、その扱い範囲も詳細に規定されました。また、従来は判決文の公開のみでしたが、裁判の過程の公開も徐々に進んでいます。一方、時間と経費がかかる裁判に代わるものとして、最短30日で裁決可能な知財権仲裁院も設けられるようになり、2010年12月には、上海に次いで2つ目の仲裁院が重慶に設けられました。検察側でも2011年1月、全国に先駆けて広東省珠海市に人民検察院高新区知財権検察室が設立されました。
こうした動きの背景には中国が現在進めている経済構造の変革があります。2011.3.30付人民日報に掲載された『OEM大国からブランド大国へ』と言う記事は、「自主的イノベーション能力向上が可能か否かは、中国がOEM大国からブランド大国へ、製造大国から創造大国へ、経済大国から経済強国へ飛躍できるか否かを決定する」「自主的イノベーション能力の向上は発展方式の転換を加速させる革新的任務である」と喝破しています。
2010年10月、国務院は「著作権・商標権・特許権・植物新品種権などの保護を目的とした<知財権侵害・模造品取締り特別活動>を2011年2月まで行う」と発表しました。これに合わせて、文化部はネットにおける著作権侵害の取締りを、商務部は模造品の輸出取り締まりを展開するなど、各行政部門も一斉に行動を開始し、年明け以降、各方面から続々と具体的な“戦果”が発表されました。
一方、中興通信や華為技術が国際特許申請量で世界の2、4位を占めるに至った今日、中国企業の知財権保護を前面に押し出されている事は大きな特徴と言えます。そのための法整備も急ピッチで、2010年2月施行の<特許法実施細則改定に関する国務院の決定>には、いかなる組織や個人も、中国で完成された発明・実用新案について外国で特許を申請する場合は、国務院特許行政部門に秘密保持審査を申し出なければならない、と規定されています。