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第496回中小企業が直面する難題−その1−
(2011年12月05日)
このところ中小企業の抱える諸問題が富に顕在化しましたが、まず、そこにいたるまでのここ数年の動きを振り返って見ましょう。
中小企業を中心とした民間企業は、リーマンショック後に大量の失業者の受け皿として大きな役割を果たし、2008年の社会固定資産投資の70%以上は民間投資が占め、都市部の就業者の70%、新規就労者の90%を吸収しました。しかし、2008年下半期の金融危機による内外の需要の減退により製品価格が下落、上半期の原料価格との落差に中小企業の体力が追いつかず、これに労働コストの上昇や輸出還付税率の低減もあって、中小企業の経営困難が顕在化しました。そこで政府は2009年9月、<中小企業の発展を更に促進する若干の意見>を出し、中小企業対策に乗り出しました。
問題の一つは産業分野、私営企業のほとんどが製造業か卸・小売企業で、生産過剰気味なのに対し、電気・水道・石炭・天然ガスなどの産業や公共工事・金融関係、更に教育・文化・衛生といった分野は一部企業に独占され、ほとんど門戸が開放されておらず、私営企業の占める比率が1%ほどしかない事です。その一方でこれらの分野の中には発展に要する資金不足に苦しんでいる分野も少なくないのですから、「関連法規を整備し、制度設計を進めて民間資金に対して大きく門戸を開放すべきだ」と言う声が上がるのも当然でしょう。
次に資金の問題。中小企業の経営困難は、中小企業自体の資金繰りの厳しさが一貫して主要な原因になっていました。一般に大手銀行は中小企業への融資に極めて不熱心です。手間がかかる割りに儲からず、担保が不十分でリスクも大きい、と二の足を踏んでいるのです。中小の銀行が融資に応じても、膨大な中小企業のニーズを賄いきれるものではありません。その上で、中小企業自身も抜本的な自助努力が要請されます。これらの点を克服しなければ、中小企業の先行きが不透明になるのは自明の理と言えましょう。
一方、金融危機対策として2009年から積極的な経済刺激政策が展開された中、本来、待ったなしの経済構造転換の過程で淘汰されるべきだった中小企業が生き残り、また、バブルの中、多くが本業外のマネーゲームにのめりこんだ、という火種も燻っていました。