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第497回中小企業が直面する難題−その2−
(2011年12月12日)
2011年に注目されたのが、中小企業のメッカ、浙江省温州の倒産ラッシュ。30万社を超える中小企業が靴や衣料品などの薄利多売で業績を伸ばし、その財力は不動産バブルの陰の主役と言われましたが、頼みのEUの経済危機と不動産バブル抑制で大打撃を受け、2011年上半期は浙江省全体で14447社が倒産。銀行からの融資も厳しく、年利40%以上という民間金融に頼らざるを得ず、「このままでは、今年中に40%が倒産」とは温州中小企業発展促進会会長の弁。こういった動きは深圳、東莞など珠江デルタでも顕著になっています。
これに対し政府は「浙江省でも広東省でも倒産ブームは発生していない」と主張、一方、「原材料・労働力・資金の“三高” コストが中小企業経営を困難にしている」との認識もあり、“用工荒”“用地荒”“用電荒”“用錢荒”の“四荒”を指摘する向きもあります。
9月9日に関係部局が発表した<2011年中国工業経済運行夏季報告>は、中小企業、特に小型企業と微型企業の経営悪化を指摘しました。2011年4月、国務院は<個体工商戸条例>を公布し、管理費の徴収をやめて就業人員数の制限も撤廃、7月には2003年以来の基準を改め、従業員数・営業収入・資産総額に基づき新<中小企業区分基準規定>を設けました。まず中小企業を中型・小型・微型に分類、大規模産業分野84、中規模産業分野362、小規模産業分野859をカバーし、かつ微型企業(工業分野なら従業員20人以下で営業収入300万元以下)の基準を加え、その中に、新規就労者の9割を吸収し1.8億人が働いている個人営業も含めました。その上で漸く微型企業の資金繰りの悪化を食い止める様々な方策が講じられるようになりました。その一つは<中小企業信用担保資金管理暫定規則>の制定であり、また、10月には国務院が小型・微型企業支援策として、増値税や営業税の課税最低限引き上げや企業所得税半減措置の延長などを含む9つの金融財政政策を打ち出しました。
“倒閉潮”の存否はさておき、景気は明らかに下振れしています。11月まで3ヶ月連続輸出が鈍化、11月のPMI(製造業購買担当者景気指数)も2年9ヶ月ぶりに5.0を下回りました。11月30日、中国人民銀行は預金準備率の0.5%引き下げを発表、12月9日には、中央政治局会議で金融政策の緩和が決定しました。インフレ抑制からまた景気刺激へ転換が図られたわけで、しばらくは剣の刃渡りのような局面が続くことでしょう。