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 第498回最近のモラル運動とモラル教育

(2011年12月22日)

2011年は中国共産党成立90周年。公民道徳建設の成果を喧伝しようと第三回全国道徳模範選出活動が盛大に繰り広げられました。評価項目は“助人為楽”“見義勇為”“誠実守信”“敬業奉献”“孝老愛親”の5項目。また、“中華美德孝当先,為人尽孝記心間”/“百善孝為先,文明走在前”というスローガンの公共広告が人民日報に掲載されました。
“人而無信,不知其可也”『論語』·為政第二/“至誠而不動者,未之有也;不誠,未有能動者也”『孟子』·離娄上/“言必信、行必果”『論語』·子路/“三杯吐然諾,五岳到未軽” 李白「侠客行」/“誠信者,天下之結也”『春秋』管子·枢言、これらの古典からの引用は全て<新時期共産党員の修養シリーズ談>(2011.6.28)の「诚信を論ず」という記事に引用されたもの。この記事は同時に劉少奇の「共産党員の修養を論ず」の一文も引用しています。これらの事実からは、官主導のモラル運動が政治的側面と社会的側面を密接に結びつけている事が見受けられます。
人民日報自体も今年、紙面を大きく割いて<诚信大家族>というシリーズを掲載しました。
その第二回(2011.6.14)のテーマが「“诚信”は本来、中華民族の伝統的美徳であるが、今日、なぜ斯くも欠落してしまったのか」。掲載されたデータに拠れば、“不誠信”に遭遇したことがある人は94%(分野別内訳:食品33%、医薬19%、建築13%、教育13%、ビジネス12%など)に達しています。“誠信”欠落の原因としては、「経済建設に比べ信用建設の進捗が遅れており、信用を守るほうがコストが高くつく」が46%、「関係部門の監督管理が弱く、責任追及システムに欠けている」が36%、「伝統的モラルの喪失と現代的モラルの欠如」が15%となっています。
地方の試みを詳細にリポートしたのが江蘇省常州市の『道徳講堂』活動を紹介した記事(2011.2.26)。100万人以上の市民が参加できるよう500箇所以上の『道徳講堂』設けられ、講義形式を排除し、身近な事例を材料とした実践・参加型の学習活動を展開して「社会公徳・職業美徳・家庭美徳・個人品徳」の教育を推進、最近は更に「道徳積み立てカード」運動も始まっています。“知行合一”を旗印に道徳教育の大衆化・社会化・多元化を進めるこのボトムアップ的取り組みがうまく大衆レベルの取り組みとして根付く事が期待されます。

三瀦先生のコラム