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第501回個人所得税の改正と問題点
(2012年1月10日)
1994年に実施された個人所得税法の修正案が2011年6月30日に全人代常務委員会で可決され、同年9月1日から施行されました。所得格差が広がり、一方で高いインフレが庶民の生活を圧迫、低所得層の不満が鬱積し社会不安が増大しかねない現状の下、所得税の課税対象と税率を的確に調整し庶民の負担を和らげる事は焦眉の急になっていました。
2011年4月25日、<個人所得税法修正案(草案)>が公表され、5月31日まで広く一般から意見を募集しました。その内容は、課税ラインを従来の2000元(1981年800元→2006年1600元→2008年2000元)から3000元に、税率のランクは9ランクから7ランクに、且つランクの幅に調整を加え、最低ランクの税率は5%で、2010年の個人所得税収4387億元から990億元の減収、納税者が給与所得者に占める割合は28%から12%に縮小します。同時に個人経営の商工業者や請負経営者に対する税制も修正され、年課税対象額60000元以下の場合、税負担が平均40%減少する案が提示されました。
3000元という課税ラインは“三険一金”(基本年金8%、基本医療保険費2%、失業保険費1%、住宅積立金12%計23%)と「都市住民消費性支出」の指標を参考にした所得控除分を差し引いた額で、月収3896元以下が無税に。この草案に対し、「先進諸国に比べ、所得平均に対する課税ラインが高すぎる」「都市と農村は生活条件が異なるので、別立てにすべき」「現在、中国の個人所得税収の税収全体に占める割合は6%、先進国と比べ差があり、課税ラインを引き上げるべきではない」など237684件の修正意見が寄せられました。
その後、この案は課税ラインは3500元(月収4545元以下が無税)に、最低ランクの税率は3%に改められ、納税者数は8400万人から2400万人に、月収5000元のサラリーマンの毎月支払額は160元から10.5元に下がりました。しかし、庶民は上述の“三険一金”のほかにも様々な保険が欠かせず、また、2010年の都市部における非私営従事者の平均月収は3096元、私営企業従事者は1730元と差が大きく、更に納税者が全給与所得者の7.7%という数字は、逆を言えばほとんどの給与所得者が課税ラインに達していない事になります。
また、無税の場合、納税証明書がとれず、住宅や自動車の購入、都市での居住証の手続きに支障をきたす例が続出しかねず、無納税証明などの対策が欠かせません。