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第504回高速鉄道事故から半年、その後の動向−その1
(2012年1月30日)
10年あまりの建設を経て、2012年末には“四縦四横”を骨格とした、時速200キロ以上、1万3000キロに及ぶ高速鉄道網が完成予定だった中国。その計画にストップをかけたのが2011年の一連の出来事。まず2月に報じられたのが江沢民前国家主席とも近しい劉志軍鉄道相の入札汚職疑惑による解任で、後任には盛光祖氏が就任しましたが、これが発端となって長年独立王国だった利権の巣窟、鉄道省にメスが入り、劉氏の右腕とされた張曙光運輸局長も海外に2300億円の資産があるとして司直の手に。3月末には会計検査署が京滬高速鉄道の建設で49億元の不適切な契約、1億8700万元の流用、3億2400万元の偽造領収書発行があった、と公表し、辣腕振りを謳われた朱镕基前首相でさえメスを入れられなかった鉄道省に激震が走りました。
こうした状況の変化に伴って、中国の鉄道整備計画に若干の修正が施されるようになりました。年初、劉志軍鉄道相の下では、第12次5カ年計画中に第11次を上回る投資が予定され(その半分が高速鉄道)、2012年だけでその額は7000億元に達する、とのことでしたが、盛光祖氏が鉄道相になり、まず、速さばかりを追求するそれまでの姿勢を転換、4月には、7月のダイヤ改正で高速鉄道の最高時速を350キロから300キロに引き下げ、開業を目前に控えていた京滬高速鉄道も300キロと250キロの2本立てにする事が決定されました。この背景には、速すぎる高速鉄道によって、路線が重複する航空各社のドル箱路線が軒並み客離れに喘いでいることも関係していると思われます。2011年6月14日の人民日報「人民時評」は「高速時代に“遅い権利”を忘れるな」という一文を掲載、「486.1キロの世界記録を出した後にスピードダウンを図ったのは人に優しい行為だ」と讃えました。
この時点では、「中国の技術は世界一流」「中国は世界の高速鉄道技術を更に向上させる主要な推進力」(2011.1.21人民日報)、「時速350キロは中国の独自開発」「知的財産権を完全に掌握、技術は世界一流」(2011.6.28人民日報)という意識はなお健在でした。ところが京滬高速鉄道が7月1日に晴れがましく営業を開始したころから、暗雲が漂い始めました。7月10日から13日の4日間で3回も故障が発生したのです。この事態にはマスコミも警鐘を鳴らしましたが、時既に遅かったのです。続きは次回に。