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第508回農業の科学技術化
(2012年2月28日)
13億余りの人口を抱える中国にとって食糧問題は常に最重要課題。1980年代初頭の人民公社解体も食糧輸入国転落による危機感からでしたし、90年代には急激な食糧増産運動が自然破壊と水不足を招き、慌てて“退耕还林还草”を始めた苦い経験があります。化学肥料に頼る農業もコストがかかり、貿易自由化が進む中で競争力の低下が懸念されます。
これらを解決する方策が科学技術の普及による農業の近代化です。第11次5カ年計画初年度の2006年に国務院は<農業現場における技術普及システムの大幅改革並びに強化に関する意見>を出して全面的な取り組みを開始し、2008年10月には17期3中全会で、農業に対する公共サービスの強化、技術革新、人材の養成をテーマに3年間で全国的に農業技術普及を目的とした公共サービス機構を整備する目標を、また、その後の5中全会では農業技術普及システムを整備する目標を掲げました。翌2009年、<農業現場技術普及システム改革とモデル県建設プロジェクト>がスタート、2011年6月までに県レベル行政区の91.9%に当たる2394地区でほぼ成果が見られたと発表されています。
農業技術普及にはテレビやネットも活用されていますが、やはり最も効果的なのが技術員による実地指導で、専門家の育成と技術指導員の育成が急務になっています。2011年、湖南省は160名の青年を3年間大学レベルで無料育成するプロジェクトをスタートさせ、広西チワン族自治区は各分野の専門家113名を「高級智嚢」として招聘する事を決めましたが、専門家や技術指導員による巡回指導のニュースには事欠きません。
導入される近代的技術の内容も多様化しています。機械化に対し政府は2011年だけで175億元の購入補助を行い、同年夏のコムギ機械化収穫率は87.8%に達しましたが、浙江省からは「機械化は苗の植え付けが大雑把で災害に弱い」と手植えに戻したニュースが入っています。有機農業・温室栽培・水耕栽培も普及していますが、この面では管理技術の向上が課題になっています。また、農業部が2010年に1.66億人の農家、11億ムーの田畑に無料で土壌の測定と施肥技術の指導を行ったことや節水技術の普及も注目されています。浙江省寧波市などでは農業用気象予報サービスが始まり、病虫害予防では2011年6月までに専門予防組織が全国で1万以上に達し、1日の作業能力は3000万ムーに上っています。