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第528回大気汚染への新しい取り組み
(2012年07月30日)
2011年秋以降、中国中東部は度々大規模な濃霧に襲われ、北京では10月の濃霧発生日数が2010年年間発生日数に相当、9月から年末まででは45日に達し、高速道路、空の便、水運などがストップ、10月7日の濃霧では交通事故の死者が全国で50人を超えました。こうした中、民衆の感覚と政府発表の数値との乖離が俄然問題になりました。北京の米国大使館が汚染度測定不能と発表した日に政府発表は「中度の汚染」に止まっていたからです。
これで話題になったのがPM10とPM2.5(大気中の直径10ミクロン、2.5ミクロン以下の微粒子)。PM2.5は長時間浮遊し長距離を移動、有毒物質も含み、微細なため肺に侵入、慢性気管支炎・気管支喘息の原因になります。ところが、従来の中国大気汚染指数(API)にはPM2.5が強制的観測範囲に組み込まれていないのです。そこで政府はPM2.5の年平均・1日平均の濃度制限値をWHO並みのそれぞれ1立方メートルあたり0.035mgと0.075mgにし、オゾンの8時間濃度制限値も取り入れた案を作成、2011年11月17日から12月5日までパブリックコメントを募集しましたが、同基準導入期限を2016年とした事に、切迫した地域ではできる限り早く導入を、という意見が相継ぎました。
同年11月24日付人民日報に「大気の質を示す標語を改めよう」という記事が掲載されました。それによると、中国の分類は4級7標語ですが、同基準に対するアメリカの表現に直すと、1級(汚染指数:優→良好、2級(51-100):良→普通、3級の1(101-150):軽微な汚染→敏感な人には不健康、3級の2(151-200):軽度な汚染→不健康、[4級の1(201-250):中度の汚染、4級の2(251-300):中度の重汚染、5級(300以上):重度の汚染] →危険、といった差異があり、早急に改善すべきだ、とのこと、これももっともな話です。
同年12月21日、環境保護部は、2012年に北京・天津・河北省、長江デルタ、珠江デルタなど主要地域でPM2.5のモニタリングを行い、2013年に113の都市へ、2015年には地方都市へと拡大するタイムスケジュールを発表しました。
北京のPM2.5発生源は、石炭消費と自動車の排気ガス(60%)、工事現場(23%)、塗料などの溶剤(17%)となっています。全国で年間35億トン以上も消費される石炭、2011年に1800万台も増えた自動車、それぞれに対する真剣な対応と意識変革が求められています。