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第530回漁業と資源保護
(2012年08月20日)
第11次5カ年計画(2006年〜)最中の2007年、中国漁業は大きく発展して、漁業人口は30年前の394万人から2100万人(海洋533万人)に増え、水産品生産総額は4747万トンと10倍に増加し、1989年以降世界一を占め、国民の動物性タンパク摂取量に占める割合も3分の一へと急速に拡大、中でも養殖業は、70年代のホタテに始まり、80年代のエビ、90年代以降の生簀養殖と、その生産量全体に占める割合は69%に達していました。
しかし、発展は同時に海を荒廃させました。魚網が密集し、小魚まで一網打尽にする漁法が横行、東シナ海沿海地域で捕れる魚は多くがその年に成育した魚で、2齢以上はわずか1割弱、海底1平方メートル当たりの生息生物も1gを下回り、何より漁獲量そのものが再生能力を30%上回っていました。加えて、河川湖沼や海岸線を使った港湾・工業施設・住宅・リゾート建設や開墾がすさまじい勢いで進み、魚は海辺の産卵場を失い、養殖場も船の航路とぶつかり合い、また、東シナ海沿岸だけで2007年は400万トンの汚染物が流入し、海への排出口の87%が基準を超えた汚水を排出していました。
状況打開への様々な対策の一つが淡水・海水で毎年精力的に行われる稚魚の放流で、東シナ海では大型建設プロジェクトの補償金や汚染事故の罰金を財源に実施され、2006年には<中国水生生物資源養護行動綱領>を施行して放流量を捕獲量が上回る状況の改善に努めました。海底の整備も進められ、2011年の報道では、山東省長島で、今後3〜5年以内に各島嶼間の海底15〜30メートルに100万ムーの海底森林を作る計画が進んでいます。河川や湖では、同年、淡水養殖の面積・生産量が全国の約半分を占める長江中下流域の101の放流ポイントで魚類13億匹、貝類2100万粒の放流、水草3.5万ムーの植えつけが行われ、禁猟区間を設ける試みも今では全国的に定着、青海湖など各地で漁業資源の回復が報告され、新疆では養殖可能水面域利用率20%を100%にする計画も始まっています。
近海漁場の荒廃は、韓国との漁場トラブル、尖閣列島付近への出漁、南シナ海での漁場トラブルを生む直接的原因にもなっています。漁民にとっては死活問題で、政府も不満を抑えるために黙認せざるを得ない立場に追い込まれています。内政のツケが外国とのトラブルを一層助長しないよう、政府の根本的な対策が望まれます。