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第534回起業にまつわる話−合併号2−
(2012年09月10日)
2010年7月に“人民網”が2650名の大学生に対して行ったアンケート調査によれば、「卒業後起業したい」と答えた者は3割を超えています。主な理由は、①自由に仕事がしたい ②多額の収入が欲しい ③人生の理想 といったものですが、一方で、教育部の報告によれば、大卒者の起業率は1%にも達しません。その理由を尋ねると、 ①社会経験が不足30.7% ②資金不足34.1% ③コネ不足17.8% ④政策的サポートが不備14.9% となっており、また、資金面では、①父母や親戚50.3% ②友人8.7% ③投資者25.6% ④銀行融資11.3%と、銀行融資によるサポートが少ない事が明らかで、その改善が急務となりました。
2010年上半期の統計では大卒自主起業者は8.8万人に達し、各地方政府や大学などの補助資金は16億元で、2056の大学生起業基地が設けられ、88万人の学生が起業訓練を受けました。各地方独自の対策も盛んに打ち出され、多くの省で税の減免を実施、重慶では起業するミニ企業に資本金の30〜50%、5万元以内の援助が、河南省や山東省ではテスト開業制度を設けるなど様々な支援も始まりました。同年9月、上海市は、卒業5年以内の大学生に、戸籍地のいかんを問わず資金援助する<天使基金>制度を打ち出しました。翌2011年、大卒者起業優遇政策は更に強化され、全国的に税制上の優遇政策が実施され、卒業年度に起業した在校生もカバーする事になり、ネットでの申請も可能になりました。
以上のような起業の奨励は、リーマンショックで故郷に戻った出稼ぎ労働者や従来からの農村余剰労働力に対しても盛んになっています。共産主義青年団と農業部が2011年1月に<農村青年起業就業行動共同実施に関する枠組み協定>を締結したのはその1例といえましょう。既に山東省、貴州省、湖北省など各地から帰省者向け起業サポート制度の成果が報告されています。
2012年5月4日付人民日報が第23面全面で特集した海外からの帰国者による起業も逃せないテーマです。最近では新しい形態、ネット上での起業も盛んになり始めていますが、いずれにせよ、中国が就職圧力と産業構造の転換を克服できるかは、起業という活力に満ちた経済構造を如何に実現するかにかかっています。それには、企業、大学、職業仲介機構、ネットなどを効果的に組み合わせた起業しやすい都市メカニズムの確立が急務と言えましょう。