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第537回農村、最近の土地問題
(2012年10月01日)
遂に都市人口が農村人口を上回った中国。人口が都市化する一方、土地の「都市化」システム整備が追いつかず、様々なトラブルが発生しています。農民が請け負っている農地を徴用して非農業用地に転用、土地を失った農民は将来に不安を抱えてしまいます。また、転用の過程で得られた利益が農民に公平に還元されているのかも大きな問題に。地方政府が農地の転用で様々な建設資金をひねり出しているのは周知の事実。2010年の土地譲渡売却益は2兆9000万元と当初計画の3倍以上に達し、2011年は2兆3000万元、土地価格の上昇による収益も3兆3000万元に上りますが、農民に還元されているのはそのごく一部に過ぎません。また、土地の集約による大規模農業化も進んでいますが、大規模化を急ぐ余りの強引な土地収用や取り壊しも後を絶ちません(例:人民日報2011.3.29人民時評欄参照)。
土地絡みの最近の事件を拾ってみると、2011年に重慶市南川区で起こった「800ムーの失踪」は、補償金1ムー当たり年1元足らずで召し上げ、住宅開発業者に転売したもの。山東省微山県留庄鎮では国土資源所が自分のオフィスビルを建てるために、4年も前から農地を不法占拠していたことが明らかに。2012年3月には河南省上蔡県蔡都鎮で、外部投資による中学校建設のため、麦畑が補償もなしにブルトーザーに蹂躙される羽目に。不法なやり口が導火線となったのが広東省の烏坎事件で、結末は抗議行動を指揮した人たちが村の委員会メンバーに選出され、全国の民衆活動に大きなインパクトを与えました。
2011年春、国土資源部は、都市と農村の「建設用地増減連動実験地点」「建設用地交換行為」のチェック、農村の土地整備のチェックを5月30日までに完了するよう指示しました。5月になると、政府は<農村集団所有地所有権・使用権等確認登録証発行事業推進加速に関する通知>を発して、2012年末までに全国をカバーするよう指示しました。零細な農業による非効率、土地はあっても工作者がいない、耕したくても土地が無いという事態の改善を考えると土地の使用権を流動させる政策の必要性も否定できません。しかし、使用権所有者を株主にする大規模企業経営を選ぶか、農家を主体とした一定規模の集団経営を選ぶか、意見が分かれています。いずれにしても、土地使用権の流動は農民の利益を第一に考えるべきで、土地の収用も、補償をすると同時に、農民たちのその後の生活の安定も保証されるべきです。