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 第554回“舌尖上的中国”と食文化

(2013年01月28日)

制作に13ヶ月をかけ、2012年5月からCCTVで放送されて大反響を呼んだ“舌尖上的中国”。様々な議論がネットや新聞を賑わし、且つ深まりを見せました。
中国の食の伝統については縷々述べる必要もなく、古くは『周礼』に「八珍」の記述があり、豊富な素材、手の込んだ調理法が紹介されています。しかし、今回“舌尖上的中国”が注目された所以は、単なる美食の紹介に終わっていないからで、人民日報にも「美食の背後にある調理技術や生産過程に注目、庶民の日常生活に結び付け、共感を呼んだ」「長きにわたって培われた素朴な情感が中国人独特の人生観や時代の息吹と絡み合い、人々に味に関する民族の記憶を甦らせた」「母の味の温かさを呼び覚ました」などと紹介されました。
“舌尖上的中国”は主要部分を7集に分けて編集しています。即ち、
第1集「自然からの贈り物」:自然から与えられる様々な食材の話。岩塩・マツタケ---。
第2集「主食の話」:異なる地域や民族の主食の話。様々な穀物とそれから作られた製品。
第3集「転化のインスピレーション」:酒・醤油など微生物による発酵で生まれた様々な食品。
第4集「時間が育む味」:干し肉・ハム・漬物など時間をかけて育まれる様々な保存食。
第5集「厨房の秘密」:香り・形・味・器、さらに、煮る・炒める・蒸すなど工夫の数々。
第6集「五味の調和」:中国伝統の“五味”「酸味・甘味・苦味・辛味・塩味」に絡む話。
第7集「我が大地」:“舌尖上的中国”を保障し、継承していく生態環境保持への工夫など。
“舌尖上的中国”の放映は中国人に様々な思考を提供しています。「これは我々の目を中国人が長い間自然と調和して生み出した知恵に向けさせた」、そして「労働者を尊重することはその労働の成果を尊重することだ。大量の残飯を出し、それを廃棄して環境を汚染するなどとんでもない」(同じく人民日報)とも。
いずれにせよ、素材を生産し、加工し、そして調理する一人一人の名もない人々に焦点を当てたことは画期的と言えましょう。儒教的価値観の下、書画を除けばいかなる名工も一介の労働者として埋もれ、例えば陶器などは、すべて“景徳鎮”で括られてしまっていた中国。労働及びその成果としての技術の尊重、背景にある自然への感謝の念への気づきは、今後の中国の発展にとって大きな収穫と言えましょう。

三瀦先生のコラム