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第567回教育の機会均等と教師の質
(2013年04月30日)
2012年3月の全人代<政府活動報告>で温家宝首相がGDPに占める教育経費の割合を4%に設定すると発表し注目されました。世界水準(2008年4.5%)には届かないものの、1993年の『中国教育改革発展綱要』に書き込まれた数字が漸く達成されることになったからです。
ここ数年、教育改革に対する取り組みが本格化しています。2010年には、今後の教育発展の青写真を示した<国家中長期教育改革発展プラン綱要(2010-2020)>がスタート、翌2011年には、教育部が27の省・自治区及び新疆生産建設兵団と義務教育の均衡発展に関する備忘録を取り交わしました。2011年はまた、25年間にわたった“両基”(9年間の義務教育の基本的普及と青壮年の文盲の基本的一掃)が実現完了した年でもあります。
こういった動きの中で、今、最も力点が置かれているのが教育の機会均等です。都市と農村の格差是正が最重要課題となっている中、教育問題は医療と並び国民の最大関心事になっています。2012年5月に教育部のホームページで公布された<県域義務教育均衡発展監督指導評価暫定規則>は、生徒一人当たりの建物面積・スポーツ施設面積・教学設備・図書数、100名当たりのパソコン台数、教師と学生の比率、生徒一人当たりの規定以上の学歴を保有する教師数と中級以上の専門技術教師数の8項目について、各県内小中学校間の格差係数を算出し均衡状況を評価する、としています。これは全国3000余りの県、30万以上の学校を対象にしており、既に312の県で実験が始まっています。また、各県政府に対しても、入学の機会、保障システム、教育の質、管理業務の4方面17項目によるチェックが行われます。
教育の機会均等で大きな役割を果たすのが教師の資質。2012年12月、教育部は他の省庁と協同で<教師教育改革深化に関する意見>を公布し、教師の質を高めるために重点的に取り組む8つの面を提示、併せて、それぞれ農村義務教育教師・幼稚園教師・特殊教育教師・大学若手教師・職業学校兼職教師の育成強化に関する意見も公布しました。
教育の質の均等化を図るため、積極的に推進され始めたのが、一定地域内での教師の定期異動で、これには日本の定期異動システムが大いに参考となっています。ただ、採用時の条件、勤務距離、給与・住居など様々な待遇の差、といった問題をどう克服するか、2020年に均衡のとれた教育をほぼ実現するという目標達成にはまだ多くの困難が予想されます。