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第572回観光業、新たな視点−その1−
(2013年06月03日)
富士山の世界遺産登録で盛り上がっている日本、観光客の増加が期待されていますが、多くの世界遺産を抱える中国で、今、観光業の発展に熱い視線が注がれています。今日、観光業は世界のGDPの10%前後を占め、就業者数でも8%を上回っており、経済の重要な構成部分として注目されるようになっているのです。
中国では、2011年年末に首都北京市が同年2億人目の観光客を迎えたニュースが誇らしげに報道されましたが、その裏には、職にあぶれ、安い労賃で生活もままならぬ多くの“蟻族”を抱え、如何に産業構造の転換を図ろうかと必死に模索している北京にとって、観光業の発展が重要な足掛かりになっている事情があります。サービス業を中心としたポスト工業社会経済の構築は今後の中国全体にも関わってくる問題ですが、今まさにその問題に直面している北京にとって、農業・工業に止まらず、不動産業や医療、更には様々な娯楽やスポーツと結びついた観光の振興は必須アイテムであり、環境保護の立場からも大いに歓迎されるところです。努力の結果、2011年の直接間接の観光業従業員総数は全市の15.9%に達し、観光業総収入も前年比16%増の3000億元に達しました。
国全体でも、2011年の国内観光者数は延べ26億人、2012年には30億人に増えています。ただ、海外旅行者が延べ8000万人に達したのに対し、海外からの観光者が、日中問題の影響もあり、横這いだったのが懸念材料として残りました。注目すべきは、2012年一人当たりの年間観光消費額が都市部3600元以上、農村部1500元以上と順調に伸び、収入の10%を占めていずれも過去最高を記録したこと、また、都市部住民の観光消費が純収入全体の4分の3を占め、西部地区の観光業の伸びが高かったことです。
2011年の観光業への投資額は2.67兆元、地域別では東部地区が53%を占め、また、民間からの投資額が39%と、政府(25%)と国有企業(13%)の総和を凌駕しました。同年から5月19日が中国観光デーに指定され、様々なイベントが行われるようになり、更に2012年4月、世界の主要都市に呼びかけ、世界20都市に中国17都市を加えた国際的NGO組織「世界観光都市連合会(WTCF)」を発足させ、その本部は永久的に北京に置くこととしましたが、その一方で、問題もまた様々。次回は国内観光を中心にさらに踏み込んで分析します。