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第582回 中国映画の今後と海外戦略−その1−
(2013年08月12日)
「オオカミが来た!」。2012年2月18日、米中は、中国がアメリカから受け入れる大作映画を従来の年20本から34本に増やすことで合意し、中国映画界に衝撃が走りました。
中国映画界はその前年の2011年に既に変調をきたしていました。年間250本の新作が投入されましたが、興行収入が1000万元を超えた作品はわずか66本、国産の大作<金陵十二钗><龙门飞甲>などが予期された興行成績を大きく下回り、かえって<失恋33天>のような低コスト映画や、台湾の<那些年,我们一起追的女孩>が喝采を博したのです。
2012年上半期、国産映画の国内シェアは35%未満に凋落し、投入された80本余りのうち赤字を免れたのは5%前後、わずかに6月末に投入された<画皮2>が気を吐いただけで、その一方では、3Dの<タイタニック号>が大ヒットしていました。上半期の興行収入総額80億元の内50億元は輸入作品によるものだったのです。
2012年6月、第15回上海国際映画祭産業フォーラムで、中国映画の現状と今後について熱い議論が取り交わされました。
「中国映画は今まさに岐路に立っている」「中国映画は量から質へ転換すべきだ」「すぐれた作品は保護からは生まれない。競争が無ければだめだ」「考え方を切り替え、題材を多様化させ、人間性を深く追求すべきだ」(人民日報2012.6.21)
同年7.13付人民日報<国产电影遭遇阵痛>にも率直な意見が掲載されました。
「チケット代が高いから観客が選り好みするのだ」「国産映画と外国映画の配給ルートが不公平だ」「国産映画の製作と上映には補助を出すべきだ」
「つまりは質の問題だ」「中国映画の虚弱体質は、審査制度が国産映画の手足を縛っているからだ」「扱ってはいけない題材、表現してはいけない内容が多すぎる」「映画を思想宣伝メディアと同一視してはいけない」
中国映画の問題点として、映画産業全体の構造上の問題も提起されました。中国ではチケット代の55%を映画館側が持っていきます。中間経費が2%で制作側はわずか43%(外国では通常50%以上)、しかもそこからさらに各種費用が差し引かれる、と言うのです。百家争鳴の中、2012年下半期はどんな展開になったのか、それは次回に。