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第584回 食糧の確保−その1−
(2013年08月26日)
国家統計局のデータによれば、2012年、年間食糧生産高が9年連続増産を達成、58957万トンに達しました。その間、耕地面積は1.78億ムー(1ムーは666.7平方メートル)増加し、増産に対する貢献率の三分の一を占めましたが、その一方で都市化や工業化が進む中、年々数百万ムーの耕地が消え、油断をすれば18億ムーと言われるレッドラインへすぐ近づいてしまいます。2020年には人口が14.5億人に達する中国で、2012年既にコメの輸入量が前年比3.1倍の231.6万トンと過去最高を記録、三大穀物(コムギ・コメ・トウモロコシ)の輸入総量は1400万トン(対国内生産比2.7%)で、今後の増加傾向によっては世界の食糧供給へ与える影響が懸念されます。穀物以外でもこの9年で、大豆の輸入量は2.6倍に、食用油は5割増、綿花も6割増になっています。
食糧用、飼料用作物の需要が確実に増大していく一方で耕地面積はこれまでのような増加が見込めません。しかし、人口一人当たりの耕地面積はいまだ世界平均の40%、水資源量も一人当たり25%に過ぎず、更に労働力の構成にも重大な変化が生じています。湖南省随一の食糧生産県、寧郷県の100村1000軒の農家を抽出した調査(人民日報2012.12.23掲載)では、農作業従事者の63%が50歳以上で20代は3.5%に過ぎず、女性が全体の65.7%を占めていることが判明しました。しかも、100ムー以上の耕地を持つ農家は全県で1万軒当たり4.6軒という零細振りです。また、近年多発する洪水・干害といった自然災害、土壌の悪化や公害による悪影響も無視できず、また、化学肥料やビニールトンネルなど農業の科学技術化に伴うコストの上昇とそれによる価格競争力の低下は、FTAが進む中、大きな足枷となり得ます。実際、2012年に輸入された外国産米の価格は国内産を20%下回りました。
穀物輸入の増加は上記のような価格効果によるものや高品質あるいは用途に応じた特殊需要といった要因が考えられますが、一面では穀物自給率の低下に直結します。中国の場合、2010年、2011年、2012年の自給率はそれぞれ99.1%、99.2%、97.7%で、数字的には「ほぼ自給」の95%以上をクリアしていますが、大豆も加えると、その輸入量が国内生産量(1500万トン)の4倍近いため、自給率はもっと低くなります。こうした状況の下で、いま、どういった対策が講じられているのか、それはまた次回に。