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第585回 食糧の確保−その2−
(2013年09月02日)
増大する食糧需要を満たすにはいくつかの方法があります。まず第一は耕地の新規開拓を行うことで、例えば、2010年に国土資源部と財政部は河北省など10の省区と耕地の補充や集中化に関する協定を結び、2012年までに98万ムーを達成、最終的には175万ムーという目標を掲げましたが、全体から見れば微々たるもの、現有耕地の目減りも脅威です。
第二は品種改良や技術の進歩により単位面積当たりの収量を増加させること。中国の単位面積当たりの水稲、コムギ、トウモロコシの収量は先進諸国の平均と比較すると、まだ71%、60%、67%に過ぎず、改善の余地が大いにあります。2013年3月に国務院が認めた<国家農業総合開発高基準田建設プラン> では、2020年までに4億ムーの耕地を高収量田に変える目標が掲げられています。水稲についてみると、試算では、2050年には単位面積当たりの水稲の収量は現在比60%増が必要(1ヘクタールで43人分)とのことですが、既にスーパーハイブリッド水稲の育成も進められ、2011年には1ムーあたり900kgの収量を実現、2013年には、1ムーあたり1000kg達成へ向けたプロジェクトもスタートしました。
大規模経営による効率化も試みられています。農村では農業生産の主体が大規模農家(68.2万戸、農家総数の0.28%、全国耕地面積の7.3%)や食糧生産合作社(5.59万社、513万人、全国耕地面積の4.0%)に替わりつつあり、全国の10分の一の耕地で全国の5分の一の収量を達成しています。ただし、土地の租借期限が数年に満たず、灌漑・排水設備が貧弱で、更に農繁期の人員確保難、災害保険の未整備など解決すべき問題も山積しています。
このほかにも、病虫害は毎年延べ70億ムー余りで発生、損失は2500万トンにも達しています。しかし、農薬の使用は残留農薬問題を惹き起こし、また、害虫の耐薬性も高めており、より科学的な対策が模索されています。
せっかく生産しても、広州の検査では4割が基準を超えたカドミウム汚染米、また、貯蔵運搬手段の粗雑さによる損失は年間3500万トンでは底が抜けています。そこで2013年、国は<食糧収蔵備蓄供給安全保障プロジェクト>を発動、5年をかけて是正に取り組む姿勢を示しました。このように様々な取り組みが進められていますが、全ての根本が、生産に従事する農民の収入を確実に増やしその積極性を引き出すことにあることを忘れてはなりません。