トップ > 現代中国放大鏡
LastUpdate:
第587回 営業税と増値税:進む税制改革
(2013年09月17日)
2011年11月に<営業税から増値税への変更試行に関する財政部と国家税務総局の文書>が公布され、2012年1月から上海市で、製造業と密接にかかわる交通運輸業(陸路・水路・航空・輸送管など)と一部の現代サービス業(研究開発・技術、情報技術、文化創意、物流補助、有形動産リース、鑑定証明コンサルティング)で営業税を増値税に転換する試みが始まりました。適用税率は前者が11%、後者が有形動産リースの17%以外は6%です。
中国は今、産業構造の転換に国を挙げて取り組んでおり、サービス業の育成はその重要な柱となっています。ところが、サービス業に物品の販売や消費が相当分絡む場合、営業税だけでなく、増値税の対象にもなり、ややもすれば二重課税となってサービス業発展の足手纏いになっていました。この矛盾を解消して増値税に一本化する試みが上海で始まったのです。年末までに12万社がテスト範囲に組み込まれましたが、2か月足らずで、早くも一部の企業が「控除絡みでかえって負担が増えた」と不満を訴え、上海市は該当企業に対し過渡的な財政支持を行うと発表しました。このほかにも、地域によって異なる税制をどう調整するか、これまでの営業税での免税措置はどうするのかなどの問題が指摘され、対策が示されました。
また、試行による経験を踏まえ、2012年12月には交通運輸業と一部の現代サービス業に対し更に具体的な各業種別の政策対応が明確化されました。
この税制変更により、上海は試行3ヶ月で20億元の減税が実現、これを受けて同年8月、政府は試行範囲を北京市・天津市・江蘇省・安徽省・浙江省・福建省・湖北省・広東省の8省市に拡大すると発表、北京では9月から、福建省(厦門市を含む)や広東省(深圳市を含む)では11月から実施されました。その後、2013年2月には12省市になり、更に10以上の省市が申請しており、もし全国的に実施されれば、税収が1000億元以上減収になる一方、GDPを0.5%、消費を1%、輸出を0.7%押し上げると試算されています。
2013年2月に発表された数字によると、2012年1年間に100万社が変更に参加、税負担は400億元減少、特に中小企業は広くその恩恵に浴し、小規模納税者の負担は減少幅が40%にも達しました。ただ、その一方で、逆に税負担が増えた企業に対する抜本的な対応や鉄道運輸、郵便電信などへの適応範囲の拡大が今後の課題とされています。