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第588回 牙をむく環境汚染−その1:土壌
(2013年09月24日)
2013年4月10日の人民日報に<土壌を保護し、“母なる大地を救おう”>という、全国政治協商会議委員唐瑾氏の文章が紹介されました。
「2009年以来、重大な土壌重金属汚染が30件余り発生」「重金属汚染・農薬汚染・有機物汚染の中で最も一般的なのが重金属汚染」「多くの農村で生活ごみ・工業廃棄物が所かまわず捨てられ、汚水は垂れ流し」「有機野菜を作ろうにも、ハウスの土壌汚染がひどく、栽培に不適」であり、氏は現実として「土壌汚染が作物・食物の質を絶えず低下させ、深刻な経済的損失と健康被害を生み、風や水により拡散して大気汚染、地表水と地下水の汚染、生態系の衰退など2次災害を生んでいる。これを回復するには100-200年かかる」と指摘しています。
同5月19日付では、検査した4割が基準をオーバーした広州のカドミウム米に関する記事が掲載されました(<生態論苑>)。世論に押され、汚染米が発見されたレストランや大学食堂、生産地などが明るみになり、6月1日付の関連記事は主要生産地が湖南省・江西省・広東省などであること、「湖南省湘江では上流で数十年にわたりマンガン・鉛・亜鉛などの採掘が行われており、川底には数百トンの重金属残留物が堆積」、「広東省では廃棄家電の分解などで土壌汚染がひどく、外来農民が土地を安く請け負い、生産した農産物や家畜を外部へ販売」と指摘、該当地の農民や関連業者を恐慌に陥れていることを紹介しています。
同5月28日付(<金台視線>)はこれまで耕地面積の確保ばかり強調していたことを指摘、汚染などによる被害耕地が合計で全国耕地総面積の10%以上を占め、重金属汚染食糧は1200万トン、経済損失は200億元という数字を列挙した後、これは90年代のデータに基づいた数字で、現状の具体的な情報は公開されていない、と結んでいます。その間に汚染は「地表から地下へ、川の上流から下流へ、水や土から食品へ拡大している」とも。
これに対し政府は先頃<今後の土壌環境保護と総合対策に関する通知>を発し、2015年までに全国の実態を把握し、これ以上の拡大に歯止めをかけ、2020年までには国の土壌環境保護システムを確立する目標を掲げ、各地に土壌汚染状況調査と総合対策の実施を求めました。
中国工程院の羅錫文氏の調査によれば、土壌汚染地域は既に3億ムーに達し、2020年の目標達成には1兆元もの費用が必要、と試算しています。