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 第610回 留学と留学生

(2014年03月10日)

今や中国の留学市場は600億元。2011年頃からはブームがさらに加速、同年の海外留学者総数は33.97万人(国費1.28万人、所属先派遣留学1.21万人、私費31.48万人)、アメリカ留学者は15万7558人(前年比23%増)で、アメリカへの留学生の21.8%とトップになりました。また、同年だけで北京の5つの有名高校が国際コース設置認可を取得しています。
北京大学付属高校国際部の「何故海外留学へ?」という問いには①国外の方が教育水準が高い76.7% ②視野が広がり将来に有利81.4% ③国内の高等教育への不信感32.6% と回答、43名全員が海外留学を選択しています。低年齢化も顕著で、深圳では高校から海外に留学する生徒が2011年は前年比40%増加しました。留学先はブランド大学が61%、分野は商科66%、工科32%、IT技術24%となっています。ただ、留学方法は37%が仲介業者に頼り、全体の14%が詐欺被害に遭っているという統計も。
留学帰国者も2012年は27.29万人と前年比46.57%増加しました。その内マスター76%、ドクター11.2%で、経済学・管理学・理学・工学が77.8%を占めています。人材回流国へ変化しつつあるとも言えますが、問題はその質。2012年末で、中央政府「千人計画」帰国者3319人、地方の人材計画帰国者2万人強、留学生向けインキュベーターは260ヶ所(活用者4万人)で、同年、「海外赤子報国行動計画」36項目も展開されましたが、帰国増の理由には一人っ子に対する父母の要請や文化と言語の壁という消極的理由もあり、全体ではトップクラスの人材流出が深刻で、流出人数は世界一。科学技術関係者留学先残留率は87%に達しています。
2013年6月、アメリカ上院が世界の優秀な人材を吸収する法案を可決、これでは中国の優秀な人材を吸い取られる、と中国も2012年に人材ビザ政策やグリーンカード待遇の整備を打ち出し、帰国手続きや書類の簡素化、招請状取得や帰国後24間以内に地元派出所に帰国届出をする等の条件の緩和に取り組みました。また、公務員への制限緩和などの就職の斡旋、研究環境の整備にも力を入れていますが、より一層帰国を推進するには ①国の人材評価水準が高すぎて大多数の人材は対象外 ②海外にいては人脈が作れず世渡りに不利というコネ社会の病弊 ③起業しても民間企業に対する財政的サポートが明らかに弱いという国有企業優先のシステム改善も急務でしょう。

三瀦先生のコラム