トップ > 現代中国放大鏡
Last Update:
第612回 信用
(2014年03月24日)
経済の市場化を積極的に推進する政府。しかし市場経済は信用経済であり、信用が確立されなければ絵に描いた餅です。冷凍エビを買って帰ったらほとんど水だった(人民日報2013.11.22)、工場ができて数年の酒造業者が「30年モノ」を売っている(同2013.7.4)などの消費信用危機の話は中国では珍しくありません。ネット販売・保険契約・電気器具販売・自動車修理などのインチキも日常茶飯事、というのでは商業的信用も成り立つはずもなく、国全体として企業や個人の信用制度をどう打ち立てるかが差し迫った問題になっています。
2013年1月、国務院は<征信业(信用情報業)管理条例>を公布、3月15日から施行しました。この条例は企業・事業単位や個人の信用情報を収集整理し提供する企業を規範化・健全化して社会における信用システムを構築しようというもので、機構、業務規則、意義や訴え、金融信用情報基礎データバンク、監督管理、法律上の責任など8章に分かれています。
今後は公民の身分証ナンバーと企業・組織のコードナンバーによる統一された社会信用コード制度を実施する方針が発表されています。中国で信用システムが最初に登場したのは、中国人民銀行が2004年に設けた<金融信用情報データバンク>で、現在では1800万社、8億人の情報が収納されています。
こうした方針に合わせ、様々な取り締まりが始まっています。工商総局は同年8月15日から11月末まで、全国で商業賄賂・談合・商業詐欺・知財権侵害などを標的とした不当競争特別取締りを実施、10月になると<信用喪失被執行者リスト公布に関する最高人民法院の若干の規定>が施行され、24日から(www.court.gov.cn)で検索できるようになりました。また、中国人民銀行も、同年3月から江蘇・四川・重慶などで試験的に行っていた個人の信用記録のネット上での公開を、さらに北京など6ヶ所に拡大しました。一方でこのような制度による個人情報の漏洩や悪用も危惧されており、閲覧者登録の厳重チェックが課題になっています。
100年前に中国に滞在した宣教師が「中国人は人を信用しないのは当然のこと」と書いている(同2013.5.21)そうですが、アメリカの信用調査会社エデルマンが行った<2013年世界信用度調査報告>で、中国は調査対象17ヶ国中ビリから三番目。国を挙げての信用回復への取り組みで「国民性」まで変えることができるかが注目されます。