トップ > 現代中国放大鏡
Last Update:
第614回 2013年人民日報日本関係記事−その2−
(2014年04月07日)
次に多かったのがアベノミクスに対する評論記事で、3篇ほどの紹介記事以外は、全てが否定的に捉えた記事でした。中身は、政策そのものの否定、効果に対する疑問視、アジアや世界の経済への悪影響ですが、昨年末からは、消費税絡みの悲観的展望が目立ちました。
福島の汚染問題と復興の遅れに関する記事も目立ちました。放射能汚染に関しては5本ほど、中国も直面している原子力発電所の安全基準に関する記事もありました(2013.7.9)
中国が抱えている問題に関連した記事が多く、まずは環境問題。ゴミの分別収集や小型家電の循環利用が公害も絡めて紹介され、関連法整備がいかに綿密に行われているかが紹介されました。国産エネルギー開発、例えば温泉の地熱発電や、カナダのシェールガスへのアプローチにも関心が向けられました。
次は科学技術関係。国家戦略特区としての科学技術特区が詳しく紹介され、余剰生産能力処理による産業競争力強化への取り組みも注視されています。また、政府が全世界の海を24時間監視するため、今後5年で9基の衛星を打ちあげることも報道されました。
第3が食の問題で、偽装問題が大きく取り上げられました。その一方、食事を残さない日本人の習慣が美徳として称賛されています。習近平政権の課題、食も含めた公務員の綱紀粛正関連では日本の公務員がいかにガラス張りか、という記事も掲載されました。
第4が教育問題。児童虐待と『はだしのゲン』撤去問題を除けば、アベノミクスと対照的に好意的記事がほとんど。行き届いた保育園の送迎車、小さいころから読書の習慣を育成、書道教育の充実、また、大学の活発なサークル活動も好意的に紹介されています。
2013年3月の李克強政権誕生前後は、尖閣国有化後の非難一辺倒から、以前のような庶民を見つめる目が復活していました。正月の福袋、アイデア商店の探訪、春の流行ファッションに水戸の観梅、伊達公子の不屈の挑戦、宮崎駿や日本アニメ、日中の書画の交流、日本科学協会から15年間に313万冊が中国の38大学に寄贈された記事など、なかなか豊富でした。
日中両国民の互いの好感度がここ8年で最低になっていることは人民日報でも報道されています(2013.8.7)が、政治的対立と民間交流を安易にリンクさせない智慧が徐々に醸成されることを祈らずにはいられません。