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第618回 (続)医療トラブル
(2014年05月07日)
丁度、1年前の5/6に医療トラブルでコラムを書きました。しかし、事態は悪化するばかり。また書かざるを得ない羽目になりました。
ここ1年余りでも中国各地で医療トラブルが続発、広東省では、妊婦の夫が看護師を殴ったり、ガールフレンドが救急先の病院で死亡したことを理由に友人と殴り込みをかけた男が医師を負傷させたり、家族と農民が病人搬送時の不手際を責めて集団で病院施設を破壊し関係者に暴行したりと言った事件が相次ぎ、長江デルタでも、3名の医師が診察時に襲われ、1名が死亡、2名が負傷した浙江省の事件、重症患者の家族7、8人が看護室に乱入し施設を破壊、医者など2名を負傷させた上海中医薬大学付属病院の事件、医者が患者に殴打され意識不明になった上海交通大学付属病院の事件などが、また、環渤海湾地域でも、患者が医師を手斧で殺害した天津中医薬大学付属病院の事件、先天性心臓疾患の小児患者の死亡を理由に女医を家族で追い詰め、建物から墜落死させた河北省の事件、小児患者の死亡を病院側の不手際だと人を集め病院を破壊した復旦大学付属病院の事件、と枚挙に暇がありません。
2013年1年間で、医療関係の凶悪事件は11件(2012年は10件)、死傷者35人、うち7人が死亡しています。2012年の統計では、全国の病院一か所に付き年間27.3回ものトラブルが発生しているというのですから尋常ではありません。
さらに問題はその場に居合わせた人々の反応です。待たされ、たらいまわしにされ、薬漬け、検査漬けにされている鬱憤でしょう。「医者の態度が悪いから当然よ」とか、「医者を一人殺しておけば、次からは患者に対する態度が良くなるだろう」と言った感想が公然と聞かれます(2013.11.22付人民日報)。同記事によれば、ある社会調査で、39.8%の医師が医者をやめたい、或はやめる計画で、78%の医者が子供を医者にしたくない、と考えているとか。
最近、患者からの心づけを断った医者が家族に殴られる事件も起きていますが、心づけを要求して殴られたならともかく、断って殴られるのは日本人には意味不明。しかし、中国人なら、「お前の金は受け取らない=真面目に治療しない」事だ、とすぐ理解します。
「金をやったんだ。もし子供に何かあったらただじゃおかないからな!」とすごまれるのは、長年、袖の下で私腹を肥やしてきた病院や医師側のツケとも言えましょう。