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第631回 メディア対策あれこれ
(2014年08月06日)
最近、習近平政権の下、厳しい言論統制が展開されています。メディアに対する規制は二つの顔を持っていますが、根元ではシャム双生児のようにつながっています。大方の支持が得られるのは、報道における「四つの公害」(“有偿新闻”“虚假报道”“不良广告”“低俗之风”)をなくそう、といった部類もので、このような運動は“扫黄打非”という言葉で括られもします。“扫黄”(ポルノチックな出版物を取り締まる)に反論する人はまずいませんが、その中に政府や党に都合の悪い批判的な言論や出版を混在させれば話は別です。
2013年10月、中聯重科告発記事は虚偽報道だとして、広州市の『新快報』陳永洲記者が当局に逮捕され、『新快報』が釈放要求を掲載、日本の新聞もこぞって書きたてましたが、この事件は裏に三一集団と中聯重科間のトラブルがあり、「金をもらって書いていた」という親会社『羊城晩報』の報道が出るに及び、真相は混沌としてしまいました。中国では金をもらって記事を書くのは日常茶飯事であることから、この事件をチャンスとばかりに記者のモラル向上大キャンペーンが始まり、全国の記者25万人に「マルクス主義報道観」をテーマとした試験を行い、不合格であれば記者の免許を更新しない、とした方針も打ち出されました。先立つ2013年4月、中国記者協会は「中国の夢を実現するために“正能量”(正しいパワー)を発揮し社会的責任を果たす声明書」を発表、同組織の党書記は討論会を総括して「政治家としての頭脳と芸術家の手法を用いて弛まず語り続ける」ことを求めました。
刑法第46条には誹謗罪に関する規定があります。その第2項では「社会秩序と国家の利益を深刻に脅かす場合、国の検察機関は被害者からの訴えが無くても告訴できる」とありますが、その適用範囲が危惧されます。2014年4月、新公民運動推進者許志永氏が懲役4年に処せられた事例は、その活動が憲法の枠内での市民の権利向上を目指したものであっただけに衝撃が広がりました。人気ブロガー秦志暉氏も同月、誹謗罪で懲役3年の実刑判決を受けています。2014年2月には「国家秘密保護法実施条例」が公布されましたが、ネットでの情報漏えいを防止するという趣旨がどう運用されるのかも気がかりです。2013年11月、党中央委員会は国家安全委員会の設立を決議、主任には習近平の側近である栗戦書が就任、2014年4月の第一回会議では、習近平がその新しい国家安全概念を打ち出しています。