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第六十四回 密輸と密航
２００２年に第三四半期までに税関が摘発した各種密輸事件は７９１９件。件数は前 年比で17.1％減少したものの、手荷物に隠したり、価格、原産地、貿易方法を偽った 案件が急増、また、貿易ル−トでの密輸が５１％を占め、税関の強化が急務になっています。
密輸の手口も巧妙になってきています。"大飛"というのは海上で密輸品を運ぶハイテクを駆使したモ−タ−ボ−トのこと。どこでも手軽に荷を降ろすことができます。"土潜艇"というのは、潜水艦よろしく、箱を海水中に隠して必要な時に空気を注入して浮 き上がらせ、品物を取り出す密輸船のこと。"油螞蟻"とは、アリのように、沖合いに停泊した船から"成品油"「精製石油」などを少量ずつひそかに運ぶ小船のことを言います。
密輸物資は石油の他に、タバコ、自動車部品、家電など様々。２００２年４月に深圳で摘発された事件では２つのコンテナに新品の超薄型液晶カラ−テレビなど千台あまりの家電が隠されていました。コンテナを使った密輸は長い間不正の温床になってい て、１９９８年以前、香港と中国国内の貿易統計の数字には100億元もの差がありました。そこで中国税関は１９９８年６月から新検査システムＨ986の導入に踏み切り、大連税関では導入の翌日、早くもコンテナから密輸自動車を三台発見、その効果を実証しました。Ｈ986のお陰で、４年間で中国税関の関税収入が３倍あまりに増えたとも言われています。
密輸と並んで問題となっているのが密航。２００１年１０月８日、韓国警備艇が密航船を拿捕、密航者60名中船倉で２５名が窒息死して海に遺棄されていたことが判明しました。この船の密航者達は韓国またはアメリカへの密航を企て、成功した時は、"蛇頭"（密航手引き者）に６万元あまりを支払う約束をしていました。５ヶ月間に約１８０人を密航させていたこの"蛇頭"尹相竜は２００２年２月、寧波中級人民裁判所で懲役 九年罰金２万元の判決を受けました。
２００２年３月25日、北京で全国反密航工作会議が開かれ、４月1日からは南北一斉に反密航共同作戦が始まり、"蛇頭"の摘発が強化されています。ただ、この活動は中国への不法入国、不法滞在、不法就労、中国経由で第三国へ密航しようというものも 対象になっていて、その意味では"逃北"（北朝鮮からの逃亡者）へのからみが注目されます。
