企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

Last Update:

 第641回 加速する海洋強国志向—その1—

(2014年10月20日)

2012年に開催された共産党の18全大会。そこで提示されたスローガンが「海洋強国を建設しよう」。「海洋強国」とは「海洋をしっかり自己の管理内に置き、海洋を開発利用し、海洋を保護するといった面で強大かつ総合的な実力を持った国家」とのこと。この概念を基礎に、同大会では、海洋資源開発能力の向上も関わるものとして「“蛟竜”号による深海探査」「インド洋・太平洋などの海洋資源調査」「極地の科学調査」「全国の島嶼資源総合調査」の4つを掲げました。この背景には急速に発展する海洋経済があり、過去10年間の平均成長率は28%、2007年に2500億元未満だった海洋総生産額は5年後の2012年には5兆元を超えるほどに急成長し、このままいけば、2020年にはGDPの12%以上、2030年には15%以上に達するだろうと推測されています。
海洋経済発展プランを練るには、綿密な海洋経済調査によるデータの蓄積が欠かせません。そこで政府は2013年から2014年にかけて第一回全国海洋経済調査を実施、それに連動して同年上半期には、2016年12月完成を目指し、第二回全国海島資源調査を開始、島嶼の生態環境の整備にも乗り出しました。
この大会でもう一つ強調されたのが国の海洋権益の断固たる擁護。領有権で日本ともめている“釣魚島”(尖閣列島)、フィリピンともめている“黄岩島”(スカボロー礁)、ベトナムなどともめている“南海”(南シナ海)の石油天然ガス、東海(東シナ海)の大陸棚、問題海域での巡視の常態化などが主要項目として掲げられています。
こうした政策の立案とサポートをするためのシンクタンクとして中国海洋発展研究会が設立された、と報じられたのは、2013年1月のこと。国の認可を受けて設立されたこの国家一級社会団体は全国的かつ学術的な非営利組織で、関連各分野の専門家・学者を結集したものです。人民日報はこの団体の設立を「18全大会が提起した海洋強国建設のための重要な措置である」と報じています。同年3月の全人代で行われた機構改革では、従来の海洋局に海洋局海監総隊、公安部辺防海警、農業部中国漁政、税関総署海上密輸取り締まり警察を統合した新海洋局が発足し、5月には<中国海洋発展報告2013>も発布されました。その中では深海資源の重要性が強調されましたが、その続きはまた次回に。

三瀦先生のコラム