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第642回 加速する海洋強国志向—その2—
(2014年10月27日)
<中国海洋発展報告2013>は「深海を極めて重要な領域」位置づけ、深海技術開発の必要性を力説していますが、こうした認識の下、中国大洋協会は既に太平洋の7.5万平方キロの多金属団塊鉱区と 、インド洋の1万平方キロの多金属硫化物鉱区で探査権及び優先的な開発権を獲得し、更には、海洋微生物菌種資源バンクを設立し、深海堆積物の遺伝子解析にも取り組んでいます。
863計画の重要項目の一つ、深海探査船『蛟竜号』の設計が始まったのは2002年のこと。2005年、科学調査船『大洋一号』が300日余りかけて世界一周の探査を行い、2007年には南シナ海でメタンハイドレードの採取にも成功しましたが、『蛟竜号』は2010年に南シナ海で深度3759mに到達、2012年にはマリアナ海溝深度7062mで有人潜水艇による作業を成功させ、2013年4月に正式に中国大洋鉱産物資源探査開発協会に引き渡されました。『蛟竜号』はその後三か月間に10回以上の潜水作業テストを実施、2014年は、テストを継続しつつ、業務化への道が模索されています。これと平行して、7000mの深海で操業可能な液圧式マジックハンドなど作業用機器の開発も瀋陽自動化研究所で進められています。
一方、長さ4.6m、直径0.8m、重さ1500kg、最大深度6000m、継続可能潜水時間24時間の無人潜水艇『潜竜一号』は、2013年10月、人もケーブルもない状態で深度5030mの作業に成功しました。このテストは、中国初のメタンハイドレード総合調査船『海洋六号』が、太平洋で中国が獲得した4鉱区で行った第29回海洋科学調査の中で実施されたもので、主たる目的は太平洋におけるレアアースの資源調査にあります。
潜水深度と同圧力のタンクで体を慣らして深海での作業を可能にしようという「飽和潜水」の実験も行われています。2014年1月、中国初の飽和潜水作業母船『深潜号』で、6人の潜水員が31気圧という300mの深海で380時間を過ごし、その後、24時間かけて体を慣らして無事復帰した、というニュースも伝わりました。
この他、中国は宇宙開発における宇宙ステーション的な役割を果たす深海移動作業ステーションの開発にも着手、2013年11月には4人の乗員を乗せた試作品の4時間にわたる潜水実験が実施されています。