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第643回 社会主義法治—その1−
(2014年11月04日)
18期4中全会が閉幕し、10月23日<"依法治国”(法による国家統治)を全面的に推進する上での若干の重要な問題に関する中共中央の決定>を採択しました。"依法治国”に正面から取り組む姿勢を見せたことは大いに注目されますが、その中身はどうなのでしょうか。
まず、中国独自の社会主義法治体系確立の原則として、①中国共産党の指導の堅持 ②人民の主体的地位の堅持 ③法の下での平等 ④法治と徳知の結合 ⑤中国の実情重視、を掲げました。次に、法体系の整備では、①憲法の保証と監督制度の健全化 ②立法システムの整備 ③科学的、民主的な立法 ④重点領域の立法の強化、を挙げていますが、①では「憲法は党と人民の意志の集中的体現」、②では「立法作業に対する党の指導を強化し、立法作業中の重大問題に対する党の手続きを整備する」とあり、立法が重大な体制・政策上の調整に関わる場合は「まず党中央に委ねて討論・決定しなければならず、その後、全人代で討議修正する」となっています。この他、経済発展を市場の見えざる手に委ねるための市場経済法制度確立の重要性が謳われ、社会に対するガバナンスを整備し民生の向上を目指すための法整備も強調されました。また、この前提となる法治政府の推進、司法に対する信頼の確立と法の執行の保証、司法活動に対する監督の強化なども組み込まれています。
2014年1月から始まった起草作業は、8月に試案が提示され、意見聴取が行われました。その間、3月の全人代では、李克強首相が「我々は法治精神で近代的な経済・社会・政府を建設する」として、「法律を神聖な位置に置き、何人たりともその権限を越えてはならない」と言明、新しく制定された<国務院工作規則>では、"依法行政”による法治政府の確立が強調されました。こうした中で注目されたのが行政訴訟法の修正案です。習近平が18期三中全会の<決定>に盛り込んだ、法治国家・法治政府・法治社会の三位一体による法治建設を実現するためには、いかにして司法が権力やコネの妨害から脱却できるか、即ち裁判官の独立性を確保できるか、が問題になるからです。毎年、行政に対する上訴は全国で400万〜600万件、しかし、行政訴訟による解決は10万件ほどで、それも最近5年間における原告勝訴率は従来30%ほどだったのが、今では10%にまで落ち込んでいる、というのですから、このままでは法治国家・法治政府・法治社会も空念仏になってしまいます。