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 第651回 戸籍改革、本腰へ—その2−

(2015年01月05日)

2014年はまさに戸籍制度の本格的改革に向けた過渡期。そのプロセスでは、一時的に様々な矛盾や不公平も噴き出すことは避けられず、大胆な中にも慎重さが求められます。
まず問題なのが、地方によっては戸籍取得に高い関門を設けており、市民化の大きな障害になっていること。また、別の地方では、戸籍制度に名を借りて農民から土地を取り上げ、市民化された農民に、享受する社会保障が追いついていない現象が少なくないこと。またそれを補うための過渡的措置として、都市戸籍を得つつも、故郷の農村に農地を確保できる制度も広まっていますが、既に非農業人口になった者が農村に土地を所有することに対する不公平感も芽生えています。これを解決する方法は、都市での社会保障の充実の他に、農村の土地請負経営権の流動化を推進する農村不動産取引市場の構築が必要になります。
その一方で、都市戸籍を取得できず、農村に土地もなく、収入が国の最低賃金より低く、最低生活保障基準より高い多くの流動人口に対する対応も待ったなしです。その対応策が、まず居住証を発行して都市に定着させ、条件をクリアした者には戸籍を認めようというもので、2014年12月4日、国務院は<居住証管理規則>草案に関するパブリックコメントを開始しました。これは、各地でバラバラに行われている居住証制度を統一化したもので、享受できる権利として、居住地の戸籍所有者と同等の基本的公共サービスを挙げています。居住証取得条件は、本籍地を離れ、区が設置されている市レベル以上の都市に半年以上居住し、安定した職業、、安定した住所、継続した修学、のどれかを満たす者となっています。
基本的公共サービスには、義務教育の無料化、平等に労働に就く権利、就職斡旋サービス、社会保険への参加、住宅金融公庫の融資、公共医療衛生や文化・スポーツ関連のサービス、計画出産関連サービス、法律上の援助などが挙げられています。ただ、住宅の保証や大学入試の現地受験などは一気に解決されるわけではなく、今後に課題を残しています。
戸籍改革では、重複戸籍の是正もやり玉に挙がっています。政府の役人や企業経営者には、複数の戸籍を持ち、これを悪用して住宅を大量に手に入れたり、パスポートを何冊も取得している腐敗が珍しくありません。2014年1月には、公安部が79万もの重複戸籍を取り消した、というニュースも伝わっています。

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