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第653回 緑化と林業の現状−その2−
(2015年01月19日)
緑化の一方で破壊が進行しては何にもなりません。林業局は、2003年<樹木採掘管理規範化に関する問題に対する意見>、2009年<大木古木の都市への移植禁止に関する通知>、2013年<森林資源保護管理強化に関する通知>と<樹木採掘移植管理を着実に強化し、厳しく規範化することに関する通知>を出し、更に、2014年1月には<樹木移植管理を一層規範化することに関する通知>を再度発しました。こうした矢継ぎ早の対処は、裏を返せば、度々の取り締まりにもかかわらず、違法行為がなお猖獗していることの証左でもあります。
伐採抑制も重要な対策です。例えば黒竜江省は、大興安嶺山脈などを抱えて森林資源が豊かですが、国の天然林資源保護プロジェクトに沿い、2014年4月から省内の重点国有林地区で天然林の商業性伐採が全面的に禁止されました。今後10年間で1960年代初頭の水準への回復を見込み、その間の関連産業従事者に対する対策として、2020年までで23.5億元の財政補助も組み込まれ、またこうした動きと合わせて、森林・湿地・植生・種、それぞれの生態レッドラインの策定にも取り組んでいます。商業性伐採禁止は、今後、東北地方や内蒙古に分布する重点国有林地区にも拡大する可能性が示唆されています。
緑化のもう一つの落とし穴が杜撰な植林。内蒙古のオルドス市では、2010年に植えた苗木17万株の大半が、杜撰な資金管理によるケア不足により枯死してしまった、と報道されました(人民日報2014.2.15付)。似通った話はこれまでもしばしば伝えられています。
森林保護の持続的発展には、森林を活用した様々な産業を育成することで地元の経済に積極的に寄与することが欠くべからざる要因だ、という認識も広まっています。
上記の黒竜江省では、木材経済から脱却し、漢方薬材・山菜きのこ類などの栽培、養蜂業の育成、生態環境を利用した観光業など、“林縁、林下、林中、林上”を利用した“立体森林経済”への転換が積極的に図られています。これらの産業は、森林伐採に従事していた労働者の受け皿としても大いに期待されています。その一方で、世界第二の木材消費国(年間消費量約5億㎥、2020年需要予測8億㎥)であり、既に世界第一の木材輸入国(世界の3分の一、対外依存度50%)である中国が、量・種別両面の今後の需要を如何に充足させていくか、も重要な問題になります。